月村了衛『機龍警察 自爆条項〔完全版〕』上巻

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上 (ハヤカワ文庫JA)

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上 (ハヤカワ文庫JA)

機甲兵装という人型を模したロボットが市街地で使われるパラレルワールドにおいて、最新の技術を搭載した「龍騎兵」を要する警視庁特捜部の活躍を描いた小説、その第2弾。

群像劇であることからも、設定はパトレイバーを思わせるが、パトレイバーよりももっとシリアスなトーンである。龍騎兵に乗るのは、警察組織の異端児である特捜部の中でも、さらに異端児である。何しろ純粋な警察官ではなく、外部から雇われた傭兵である。しかも1人はIRA関連の元テロリストだというから穏やかではない。その元テロリストが第2弾の実質的な主人公になる。警察組織だけでなく、外務省やら公安やら政府やらも入り混じり、また日本だけでなく様々な国が出てきて、かなり面白いことになっている。

佐藤優『十五の夏(上)』

十五の夏(上) (幻冬舎単行本)

十五の夏(上) (幻冬舎単行本)

ごく中流の(しかし教育投資を惜しまない)家庭に生まれた佐藤優が、高校1年生の夏に、東欧からロシアへの一人旅をする……というアウトライン。

『深夜特急』に比肩する旅文学だという触れ込みもあながち間違いではない。胸が熱くなったし、冷戦の続くこの時代に共産圏の国々をわずか15歳の少年が一人旅をすることのプレッシャーは半端ないものがある。

月村了衛『機龍警察〔完全版〕』

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

機甲兵装という人型を模したロボットが市街地で使われるパラレルワールドにおいて、最新の技術を搭載した「龍騎兵」を要する警視庁特捜部の活躍を描いた小説が本作である。

完全にパトレイバーだね。

パトレイバーと違うのは、「ほのぼの」や「笑い」がないこと。元テロリスト、元傭兵、冤罪で国外逃亡した元ロシア刑事……この3名が「よそ者」として警視庁特捜部に雇われ、龍騎兵に乗っている。まだ1巻だが、どいつもこいつも一筋縄では行かない過去を持っていそうで、必然、ほのぼのとした感じになろうはずもなく、ハードボイルドな雰囲気をたたえている。

けっこう面白いので、続編もチェックしてみたい。

みやすのんき『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』

先日『走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー』という本を買ったのだが、正直ピンと来なかった。なので、さらに入門書チックな本として本書を買ってみた次第。というか、まずわたしの場合はランニングよりもウォーキングだろうということもある。今のまま走ったら膝が壊れそう。

……結局わからんなあ。具体的に書いてくれているようなのだが、大転子を意識して体重をかけるというのが結局よくわからない。イラストはわかりやすい気もするので、ピンと来る人はいるように思う。わたしはわからなかったけれども。

みやすのんき『走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー』

走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー

走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー

サブスリーというのは、フルマラソンを3時間を切るタイムで走れること、ないし走れるランナーのことを指すようだ。4時間以内だとサブフォー。

だから、50歳オーバーでサブスリーを達成するみやすのんきという漫画は凄いのだが、元々は運動音痴で、50歳手前までまともな運動をしたこともなく、体重も85kgあってと、とてもサブスリーを達成できる要素はなかったそうだ。そんなみやすのんきがどうやってサブスリーを達成できるようになったのかを、「体験談」と「自身の方法論の開陳」を織り交ぜながら語った本が、本書である。

凄いというのはよくわかったのだが、理論については正直ピンと来ていない。わたし自身、運動不足の極みで、大転子を意識しろとか言われてもね。

あと、このみやすのんきという漫画家は、とにかく他のランニングメソッド・マラソンメソッドを批判しまくっている。自分はこうすることで早くなった、自分はこう考える、と言えば良いだけだし、漫画家なのでその動きを明確に説明するにも長けているのだが、その際にどうしても他人をクソミソに貶さなければ気が済まないようだ。その辺がちょっと気になるというか、不快になる人もいるかもしれない。

津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

『「原因と結果」の経済学』の共著者であるということもあって、何となく気になり、発売前からKindleで予約していた本。

incubator.hatenablog.com

本書は、信頼できる複数の研究成果を踏まえて「健康に良いと考えられる食品と」「健康に良くないと考えられる食品」を具体的に挙げるとともに、その根拠(エビデンス)を紹介した本である。

 数多くの信頼できる研究によって本当に健康に良い(=脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる)と現在考えられている食品は、①魚、②野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類の5つである。逆に、健康に悪いと考えられているのは、①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)、②白い炭水化物、③バターなどの飽和脂肪酸の3つである。

本書のほぼ冒頭で書かれている上記の引用部分が、まあ結論と言えば結論である。これに、魚の場合だと「魚がなぜ良いか、どのようなエビデンスでそれが証明されたと言えるのか」をしっかり説明するし、逆に赤い肉の場合であれば「赤い肉がなぜ悪いか、どのようなエビデンスでそれが証明されたと言えるのか」をしっかり説明して、さらにコラムで「グルテンフリーってどうなの」「カロリーゼロってどうなの」「日本食ってどうなの」といった読者が気になるであろう点に対して追加の説明を行う、というのが基本的な本書の構成になる。

わたしは、幾つかの点から、本書は非常に独自性があって面白いと思った。とりあえず3つぐらい挙げておこう。

1点目は、医師としての信念や体験談ではなく、あくまでも根拠(エビデンス)を重視するという姿勢である。

例えば本書では、食品を5つのグループに分けている。エビデンス的に健康に良いと考えられるという結論が出ているグループが1で、ちらほら健康に良いと考えられるという研究結果も出ているねというグループが2。逆に、エビデンス的に健康に悪いと考えられるという結論が出ているグループが5で、ちらほら健康に悪いと考えられるという結論が出ているグループが4。最後に、健康に良いとも悪いともにわかに言えないグループが3となる。これはすなわち、巷では何となく健康に良いと思われている食品であっても、信頼できる研究結果が揃っていない限り、その食品はグループ3である。

なぜこれが独自性があって面白いか? 正直あまり言いたくないが、日本という国は食や健康に対してとにかく個人の「体験談」や「思い込み」が非常にまかり通っている。そしてマスコミの過剰な煽りがそれに拍車をかけている。だから何かちょっとテレビで紹介されるとおバカな大衆がワーッと群がって商品を買い尽くし、しばらくすると飽きて元に戻る、その繰り返しが延々見られるのである。あー、嫌な話になったから元に戻す。

2点目は、著者が「栄養素単体」ではなく「摂取の仕方」に目を向けている点である。

著者は、リコピンが良い悪いだの、βカロテンが良い悪いだのといった説明の仕方はしない。栄養素単体で健康を語るべきではないと考えているからである。事実、それを裏付ける研究結果が出ている。例えば、果物は健康に良いが、フルーツジュースは健康に良くない(血糖値を急激に上げて諸々のリスクを引き上げる)ことが証明されている。また、上記で書いた「茶色い炭水化物」と「白い炭水化物」も同様だ。著者は玄米や蕎麦といった精製度の低い炭水化物を「茶色い炭水化物」と呼び、白米や小麦粉といった精製された炭水化物を「白い炭水化物」と呼ぶ。どちらも炭水化物じゃないかという話だが、研究結果では精製の度合いで健康に対して与える影響に顕著な差が出ていることがわかっている。フルーツジュースも白米も、食物繊維が取り除かれているため「砂糖の塊」みたいになって血糖値が跳ね上がりやすい、というのが大きな原因のようである。しかし、だからと言って白米と難消化性デキストリンを一緒に摂取すれば良いというような単純な話でもないらしい。

なお、これは本書に書かれていたことではなく、個人的な想像なのだが、白米と難消化性デキストリンを両方摂取すれば良いよねというような単純な話にならないのは、「微量栄養素」が大きいように思う。微量栄養素というのは、タンパク質やビタミンCといったものと違い、食品に微量にしか含まれていない栄養素のことを指す。この微量栄養素の中には、まだ効果が科学的に十分に解明されていないものや、そもそも認識されておらず名前がついていないようなものも多くあるそうだ。サプリメントだけでは駄目で食品から栄養を摂取すべきというのは、サプリメントにはこの「まだ名前もついていないような微量栄養素」が入っていないからだと思う。

3点目は、著者は健康に良いから摂取すべき、健康に悪いから摂取すべきでない、と単純には言い切っていない点である。

砂糖や白米は体に悪かろうが、それを食べられないストレスで体調が悪くなっては元も子もない。わたしが読む限り、著者のスタンスは、まずは冷静にエビデンスという基準で食生活を見直してみてはどうだろうか、といった程度である。押し付けがましくないのは良いね。医師だの健康アドバイザーだのが、ろくに検証もしていない事柄をしたり顔で語るのは、(たとえ事実だとしても)正直あまり好きになれない。

余談

勝間和代が本書を読んだらしい。最近の勝間和代は、一時期のドヤ顔重視の振る舞いがなくなり、ナチュラルな感じである。はてなブログに来たぐらいから、高感度が上がってきた。

katsumakazuyo.hatenablog.com

堀栄三『情報なき国家の悲劇』

情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫)

情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫)

すごく簡単に言うと、情報を軽視して精神論で戦った結果、日本軍は第二次世界大戦で負けてしまったという内容。

零戦での特攻みたいなことをしたり(人命が確実に喪われるし、そもそも本当に戦術として脅威たり得たのは最初だけだったと聞く)、明らかに国力で負けているアメリカに戦いを挑んだりと、そりゃあ冷静な判断ができていないのだから情報も軽視していただろうなというのは誰でもわかっている。しかし改めて読むと、なかなか刺さるというか。かなり昔の本だが、未だに売れているようで、Amazonでもかなりのレビューがついている。

谷口学『会計参謀』

会計参謀-会計を戦略に活用する-

会計参謀-会計を戦略に活用する-

会計参謀という書名が何となくかっこよくて購入。

要はCFOに必要なスキルを解説した会計の入門書である。

会計の解説は、やや基礎的に過ぎる気もするが、わかりやすく、入門書としての役割は十分に果たせていると思う。なお、あくまでも会計参謀を目指す人に向けた入門書であり、経理マン向けではない。したがって簿記だの仕訳だの決算だのといった経理業務・財務会計ではなく、ファイナンスとか管理会計とか意思決定とか、そっち方面の解説になる。

実務家教授とのことで、M&Aにかかる生々しい描写が非常に面白かった。こっちだけで本を出しても良いんじゃないか。

山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

古くはApple、最近ではGoogle・Amazon・Facebookといった世界的なスタートアップ企業に憧れる人々は少なくないだろう。わたしは、別に転職したいとは思わないが、これらの企業が確固たる理念を持っているなと感じることはある。一方、日本を代表するネットベンチャーの類が「憧れ」に値する起業であるか、あるいは世間にそう見られているかを問うと、残念ながらそうではないだろう。端的に「格が違う」と思う。

では、その「格」はどこから来ているのか?

本書の中盤に、非常に得心した箇所があったので、少し引用してみたい。

 ここで、DeNAをはじめとしたネットベンチャーが、コンプガチャやキュレーションメディアといった社会問題を発生させる経緯について、簡単におさらいしてみましょう。多くの方が感じられたことだと思いますが、この二つの事件は、事業内容が全く異なるにもかかわらず、事件に至る経緯は基本的に同じで、整理すれば次のようになります。

  1. まず、シロ=合法とクロ=違法のあいだに横たわるグレーゾーンで荒稼ぎするビジネスモデルを考案する。
  2. そのうち、最初は限りなくシロに近い領域だったのが、利益を追求するうちに限りなくクロに近い領域へドリフトしていく。
  3. やがて、モラル上の問題をマスコミや社会から指摘されると、「叱られたので止めます」と謝罪して事業の修正・更生を図る。

 ここでポイントになるのが、ともに「開始の判断=経済性、廃止の判断=外部からの圧力」という構造になっている点です。つまり、美意識に代表されるような内部的な規範が、全く機能していないんですね。
 事業開始の意思決定にあたっては、「法律で禁止されていない以上、別に問題はないだろう」というのが、彼らの判断基準になっています。

わたしは、ネットベンチャーが手がけたコンプガチャやキュレーションメディアというビジネスモデルは非常に卑しいものだと思っている。彼らは大衆を馬鹿で愚かな金づるだとしか思っていないためである。これらのビジネスモデルには、クライアント(ここではBtoCモデルの受益者である全ネットユーザー)に対するリスペクトが圧倒的に足りない。彼らが生み出してきたものは大衆を「食いもの」にするための手段に過ぎず、事実として社会はちっとも良くならず、害悪だけを撒き散らした。しかし、この手の問題は必ず再発するだろう。いみじくも著者の山口周が上記でピシャリと書いているように、彼らは「叱られたので止めます」と言っているだけで、本質的には何も反省していないからである。彼らには美意識がなく、ルールの抜け穴を見つけて荒稼ぎをしたいと思い、その抜け穴を見つけて実行してきただけだからである。

閑話休題。ここらで本題に戻るが、世界のエリートがなぜ美意識を鍛えるのかという問いへの答えも、上記を踏まえると自ずから出てくるだろう。曖昧模糊とした「美意識」なるものが、ビジネスそのものへも役に立つということだ。美意識をたたえた企業の方が、美意識の欠如した企業よりも儲かっているし、世界を面白い方向に変革している。といっても、何も美意識さえあれば全てが解決するわけでもない。本書では、アート・サイエンス・クラフトのバランスが重要だと述べている。まずアートとは本書で述べている美意識、次にサイエンスとは事実・論理から得られた知見、最後にクラフトとは過去の実績や経験から得られた知見を指す。今はサイエンスとクラフトに傾斜しすぎているが、アートもしっかりと意識的に鍛えることでバランスが取れる、著者の主張は端的にそういうことである。

デロイトトーマツコンサルティング株式会社『新版 成功する!IFRS導入プロジェクト』

成功する!IFRS導入プロジェクト

成功する!IFRS導入プロジェクト

コンサルが書いたIFRS本。ひとつひとつの会計論点について細かく解説した本ではなく、業務対応・システム対応を含めて、どのようにIFRS対応プロジェクトと向き合っていけば良いかを解説した本。

以下、備忘。自分のためにつけるので、本書の網羅的な要約にはなっていない。

なお、IFRSプロジェクトでどんなことをやるのかを網羅的に知りたければ、とりあえず5章の目次をざっと眺めてほしい。それだけで、わかる人はわかる。

第1章 IFRS(国際会計基準)とは

P.14から引用。

 原則主義では、数値基準のような具体的なガイドが示されていないため、逆にそれらを逆手にとった適用回避行為が生じにくいといわれます。(P.14)

同じく、P.14から引用。

 結局、IFRSにおいては、どのような会計処理を行うかは会社自身が判断しなければならないのです。(略)今まで以上に会社と会計監査人は、企業活動において生じる事象の会計処理上の問題に対して、緊密に競技を行う必要があります。(P.14)

第3章 5W+1Hで考えるIFRS導入方針

連結パッケージの定義が曖昧なのでGoogleさんで検索して定義。「連結パッケージとは、連結決算を行うにあたって必要な情報を各子会社に入力してもらうための定型フォーマットのこと(主にエクセルファイル等で作成)。親会社は各連結子会社にこの連結パッケージを事前に配布し、あらかじめ決めた期日に回収してから連結作業を開始する。」

holdings-renketsu.com

renketsu.info

第4章 IFRS導入プロジェクトの必達ゴール
  • 連結範囲の見直し
  • 決算日の統一
  • サブ連結
  • 現地基準との両立
    • 現地基準で決算を行った後IFRSに組み替える or IFRSで決算を行った後現地決算に組み替える差分調整方式
    • 両基準による記帳を同時に処理する並行転記方式
第5章 IFRS導入プロジェクトの進め方

以下、本書の目次を引っ張ってきてます。これは役に立つ。

  • 調査・分析フェーズ
    • 【ステップ1】プロジェクト計画の策定
      • タスク1 調査スコープの決定
      • タスク2 フェーズ1の作業計画の策定
      • タスク3 プロジェクト組織の設計とプロジェクトメンバーの選定
      • タスク4 プロジェクト運営ルールの策定
      • タスク5 プロジェクトメンバーのトレーニング
      • タスク6 パイロット分析の実施
    • 【ステップ2-1】会計差異分析
      • タスク1 会計方針の差異抽出
      • タスク2 会計方針・手続きオプション案の検討
      • タスク3 開示項目の検討
      • タスク4 会計監査人との協議
    • 【ステップ2-2】財務報告インフラ影響分析
      • タスク1 業務・システム要件の整理
      • タスク2 影響する自社業務・システムの識別
      • タスク3 業務・システムの詳細な影響内容の検討
      • タスク4 対応施策案の検討と必要工数の概算見積もり
      • タスク5 他の関連プロジェクトに対する影響の把握
    • 【ステップ2-3】会計方針の仮選択
      • タスク1 会計方針・手続きオプションの比較検討
      • タスク2 会計監査人との協議
      • タスク3 財務インパクトの試算
    • 【ステップ3-1】IFRS導入方針の基本的検討
      • タスク1 重要課題の再整理
      • タスク2 スケジュール上の制約事項の整理
    • 【ステップ3-2】IFRS導入ロードマップの策定
      • タスク1 ロードマップの策定
      • タスク2 意思決定
  • 導入フェーズ
    • 【ステップ1-1】会計方針の決定
      • タスク1 会計方針の決定とポジションペーパーの作成
      • タスク2 会計監査人との協議
    • 【ステップ1-2】開示フォームの作成
      • タスク1 モデル財務諸表の作成
      • タスク2 CoA(勘定科目表)の作成
    • 【ステップ1-3】グループ会計方針のマニュアル一式の整備
      • タスク1 グループ会計方針のマニュアル体型検討
      • タスク2 グループ会計方針のマニュアルの運用ルール検討
      • タスク3 グループ会計方針のマニュアルの作成
    • 【ステップ1-4】連結パッケージの作成
      • タスク1 IFRS組換情報の定義
      • タスク2 連結パッケージの作成
    • 【ステップ2-1】システム構築
      • タスク1 新業務プロセスの定義
      • タスク2 改修が必要なシステムの特定
      • タスク3 システム改修・導入
    • 【ステップ2-2】決算体制構築
      • タスク1 IFRS決算体制の構築
      • タスク2 J-SOX対応
    • 【ステップ2-3】社内諸制度の整備
      • タスク1 社内諸制度のIFRS対応
    • 【ステップ3-1】トレーニング
      • タスク1 トレーニング方針策定
      • タスク2 トレーニング資料作成・体制構築
      • タスク3 トレーニング実施
    • 【ステップ3-2】グループ展開
      • タスク1 各社の目標到達レベルの検討
      • タスク2 検討ステップの策定
      • タスク3 各社ロードマップの検討
      • タスク4 進捗管理と各社への支援方針の策定
    • 【ステップ3-3】進捗管理
      • タスク1 各社の進捗状況の管理
      • タスク2 遅延会社へのフォロー実施
    • 【ステップ4-1】決算リハーサル準備
      • タスク1 実施方法の検討
      • タスク2 会計監査人との協議と実施要綱の確定
      • タスク3 決算リハーサル実施要綱の説明
    • 【ステップ4-2】決算リハーサルの実施
      • タスク1 財務諸表作成施行
      • タスク2 会計監査人によるレビューの実施
    • 【ステップ4-3】改善
      • タスク1 課題の識別
      • タスク2 課題の対応
  • 維持・改善フェーズ
    • 【ステップ1】各種インフラの運用開始
    • 【ステップ2】期首残高確定
    • 【ステップ3】並行決算
    • 【ステップ4】維持・改善
    • 【ステップ5】IFRS改訂への対応
第6章 システム整備の論点

P.187-188から引用。

 IFRS適用に際して、システム面で想定される大きな課題の一つに、会計システムにおける複数会計基準への対応があげられます。
 これは、会計システムにおいて中心的な役割を担う総勘定元帳システム(GL:General Ledger)や連結会計システムにおいて、日本基準(海外グループ会社の場合は各国基準)とIFRSの複数会計基準に基づく会計データを管理するということです。
 これまで第2章等で述べたとおり、現時点では、IFRS適用は連結財務諸表のみが対象となる可能性が高く、単純に考えれば連結対象会社の単体財務諸表は日本基準か各国基準で作成し、個社の単体財務諸表を連結時にIFRSに変換すればよいということになります(本書ではこれを「川下対応」という)。
 しかし、連結決算の早期化や業務の効率化といった観点を考慮すると、必ずしもこれが最も望ましい形態とはいえず、個社の単体財務諸表レベルでIFRSベースの財務諸表等を作成し、そのまま連結を行うべきである(本書ではこれを「川上対応」という)という考え方が導かれます。
 川上対応の場合には、企業はIFRSと各国基準の療法に準拠した個社の会計システムの仕組みを持つことが望まれます。
 具体的には、総勘定元帳システム上に各国基準とIFRSの複数帳簿データを保持し、個社の各国基準用帳簿からは各国基準の法定財務諸表が、IFRS用帳簿からはIFRS連結決算用の財務諸表がそれぞれ出力できるような仕組みが想定されます。(P.187-188)

P.189-194から引用。

 複数帳簿を実現するための仕組みを検討する際には、連結対象となる個社の会計システムだけでなく、親会社の連結会計システムも含めた企業グループ全体のアーキテクチャを俯瞰してとらえる必要があります。ここでは特に、以下に示す3つの論点から、アーキテクチャオプションを整理します。
 1つ目は、IFRS適用に際してグループ会社の会計基準を統一し、個社の帳簿データをすべてIFRSベースで管理するのか、あるいは個社の帳簿は日本基準等の各国基準のみで管理するのか、という論点です。
 これは、IFRS対応において「データ」の視点からファイナンスアーキテクチャをとらえた論点であるといえます。
 (略)
 個社の会計システムで複数帳簿を保持する場合、これら複数帳簿に対して日々のデータを、どのような方法で、どのタイミングで記帳するかにより、システム全体の処理フローや既存の業務システムとの連携方法が異なります。
 これは、IFRS対応におけるファイナンスアーキテクチャを「アプリケーション」の視点からとらえた論点であるといえます。
 (略)
 グループ会社の経理担当者が、IFRSベースでの会計処理や会計基準間の調整を個社のシステム上で行う場合には、そのために必要なシステム基盤を個社ごとに整備する必要があります。
 一方で、グループ会社は従来どおり各国基準での会計処理を行い、IFRSへの会計基準間の調整はSSC(シェアードサービスセンター)で集中的に行うといった方法も考えられます。
 この場合、川上対応なら個社(あるいは、グループ共通)の会計システム側にIFRS用の帳簿を保持し、オペレーションはSSCで集中的に行うといった運用が想定されます。川下対応なら、親会社の連結会計システム側にIFRS用の調整仕訳や注記情報を入力するための仕組みを構えることになります。(P.189-194)

宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』

あとは野となれ大和撫子 (角川書店単行本)

あとは野となれ大和撫子 (角川書店単行本)

アラル海を基にした架空の国「アラルスタン」を舞台とした物語。

アラルスタンはソビエト末期に作られた砂漠の小国で大統領が暗殺され、議員たちは我先にと逃げ出し、周辺国が公然と内政干渉を始め、それに反発した極右テロリストが治安は大悪化。そんな中、後宮(ハレム)の若き女性たちが立ち上がり、自分たちで国家を運営しようとする。もちろん彼女たちにも理想はあるが、火中の栗を拾うようなもので、旨味があるわけでもない。しかし祖国を守りたい……そんなアウトライン。

SF作家らしく設定の妙はあるが、本書自体は別にSFって感じでもない。まあわたしとしては面白い本が読めればそれで良いわけだし、実際面白いから何も問題はない。

なお、後宮といっても、初代大統領はまさにハレムとして使ったようだが、暗殺された二代目大統領は女を侍らすこと自体にあまり興味がなく、設定上は難民や孤児を受け入れた女性たちの学校のようなものということになっている。

余談

余談というかある意味本書の本質なのかもしれないが、アイシャという登場人物が「国体・信仰・人権による三権分立の確立」というプランを出していて、これはなるほどと思った。日本を始めとした脱宗教の近代的な法治国家にとっての三権分立とは当然に国会(立法府)・内閣(行政府)・最高裁(司法府)という3つなのだが、宗教に根ざした国家の場合、何が何の権力を行使し、また牽制していくべきなのかという話がある。イスラム圏の国家は実際こうなのかもしれない。

樫木祐人『足下の歩き方 ハクメイとミコチワールドガイド』

足下の歩き方 ハクメイとミコチワールドガイド (HARTA COMIX)

足下の歩き方 ハクメイとミコチワールドガイド (HARTA COMIX)

この手の本は毎回「manga」タグと「book」タグのどっちをつけるか非常に悩むんだけど、まあ文字の方が多いし、ムック本みたいなものだから、やはり本としてカウント。ハルタコミックスのレーベルから出てるんだけどね。

さて、内容は完全にファンブック。登場人物の年令や性別・好きな食べ物、町の地図や世界の地図等、単に漫画の内容を要約しただけではない設定がふんだんに載っている。さすが公式本。原作を読まない人には一ミリも価値はないが、原作ファンは一読して損はない。設定関連で個人的に驚いたのは、性別かな。作者が下手だったりキャラの書き分けができてないというわけでは全然ないんだけども、けっこう中性的に描かれているキャラクターが多く、性別を勘違いしていたキャラクターが何人もいた。

なお、ハクメイとミコチのコンビのことは「ハクミコ」と言うらしい。アニメ化もされたし、ファンは「ハクミコ」って呼ぶようになるのかな。

シバタナオキ『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

率直に言って、あまりピンと来なかった。

一般的に言って、この手のタイトルの本を買う人は決算書分析の方法論や原則論みたいなものが知りたいのではないだろうか。わたしもそうである。

しかし本書の場合、具体的な事例(EC事業など)を用いて、著者がどう読み、どう分析してきたかは確かに書かれているのだが、あまり汎用的な感じではない。それにAmazonのレビュアーも書いていたが、決算書分析というよりはビジネスモデル分析みたいな感じなんだよね。財務諸表に書かれていないことが分析されている。これなら1日1社有価証券報告書を読んでそれを100日間続ける方がよっぽど有益だ。100社を比較できるわけだから。(もちろん忙しければ1週間1社でも良いが。)

野崎まど『バビロン 3 -終-』

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

バビロン3 ―終― (講談社タイガ)

東京地検特捜部の検事が主人公……だったが、主人公は悪に対抗するための武器(拳銃)を求め、FBIに転職する。その結果は……圧巻の一言。アメリカ合衆国の大統領まで出てくるわけだが、この悪はとことん邪悪で、とことん強いなあ。

とりあえず「終」と書いてあるが4巻もありそうだ。3巻のラストの引きが凄い。体に思わず力が入っていた。