インキュベ日記

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木村元彦『誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡』

誇り―ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)

誇り―ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)

サッカーのドキュメンタリーを読みたいなぁと思いつつ本屋をウロウロして見つけたのが本書である。俺は単純にピクシー(ストイコビッチの愛称)が大好きなので購入したのだが、想像以上に読ませる。
サッカーファン以外は、まあピクシーの国籍がユーゴスラビアであることは知らないだろう。ユーゴスラビアはとてもデリケートな国である。幾つもの民族や宗教が混在し、問題を幾つも内包してきた……のだが、しかし本書を読む限り、大多数の国民は仲良くやってきていたようだ。宗教や民族は違えど、それでも同じ国民だったのである。しかし、それぞれの民族の分離独立問題がユーゴスラビアに沸き起こる。異民族・異宗教同士がいがみ合うようになり、やがて隣人が隣人を殺しあう凄惨な日常が始まる。そしてユーゴスラビアはスポーツ制裁を受けることになるのだ。ピクシーを語るときに、ピクシーがセルビア人であることを抜きには語れない。
でも、しきりに著者も訴えているが、政治の世界のゴタゴタのために、直接的な責任のないユーゴスラビアのサッカーがペナルティを科されていることは、果たして妥当なことなのだろうか? スポーツが政治と密に結びつき、政治的な役割を背負わされがちだということは、サッカーファンならずとも知っておいて良いだろう。