ポール・ストラザーン『90分でわかるアインシュタイン』

本書を読むことで「90分でアインシュタインの相対性理論の全てがわかる」といった幻想を抱いてはならないし、わからなかったとしても怒ってはならない。というのも、著者は最初から「相対性理論がわかる」ではなく「アインシュタインがわかる」としか書いていないからだ。学問や思想よりは、人物と成果との関係性にスポットが当てられている。アインシュタインの人生を追いながら、どのような変遷を経て、どのような必然(あるいは偶然)で相対性理論が生み出されたのか、それを述べている本なのだ。相対性理論の何たるかなどエッセンス程度にしか述べられてはいない。

けれども最初はエッセンスくらいでちょうど良いと思う。専門的な内容を詳細かつ厳密に述べる本ではなく、対象に親近感を覚えることを目的とした本である。その意味では、皮肉ではなくて本当に良い本だと思う。

ちなみに、著者は「90分でわかる」シリーズをライフワーク的に執筆していて、哲学シリーズ・科学者シリーズ・医学者シリーズと続いているようだ。これは科学者シリーズの第1弾である。また「90分でわかる」シリーズは今のところ全て浅見昇吾という人が訳している。原文のポール・ストラザーンと訳文の浅見昇吾の両方の功績になるだろうが、このシリーズの文章はかなり俺の好みである。