細見和之『思考のフロンティア アイデンティティ/他者性』

シリーズ「思考のフロンティア」の第1冊目である。得てして学術本は分厚くて読み辛い上に値段もイケてないことが多いのだが、このシリーズは難しさも分量もそれほどハードではなく、値段も1200円なので安い。本書は、アウシュビッツに移送されたレーヴィやツェラン・在日の金時鐘の体験や思想・表現を通し、主に言語を素材にしてアイデンティティや他者を文学研究的に読み解く本である。この分野の基礎知識的なものを詳しく解説しているわけではないけれど、アイデンティティの内包する問題を感覚的に感じることは出来た。学術本という位置づけにはなるだろうが、「少し硬めのエッセイ」といった感覚でも読める。