宮本輝『螢川・泥の河』

俺は今でこそ読書が趣味だと言えるようになったが、(小学生の頃はよく本を読んでいたものの)中高生の間はほとんど1冊も本を読まなかった。しかし高3の1月に、受験勉強が面倒で、作者が同じ高校の出身だという理由だけで手に取って読んだのが、本書である。本書を読んで以来、読書にハマってしまうのだから、個人的にも思い入れのある本である。

まあ「泥の河」は太宰治賞を受賞し、「螢川」は芥川賞を受賞しているそうだし、個人的な思い入れを抜きにしても客観的に良い作品だと思う。初期の作品にしては老成しているというか、あざといほどの叙情ぶりを発揮しているようにも感じるが、その叙情性も宮本輝の魅力だし、その魅力が良い形で作品に反映されている。特に「螢川」のラストの、光をたたえた蛍がヒロインに群がるシーンは圧巻。元々あまり本など読んでこなかったということもあるが、このシーンで初めて「小説の情景が脳裏に浮かぶ」という感覚を味わったような気もする。何にせよ思い出深い作品。

<追記>以下のエントリーで、本書について詳しく言及している。

incubator.hatenablog.com