松本仁一『アフリカで寝る』

前日の『アフリカを食べる』とセットの本なのだが、帯には「食べて寝てアフリカがわかる」というコピーがついている。そのコピー、シンプルで潔いじゃないか。食べて寝たくらいでアフリカがわかるかどうかは俺にはわからないが、少なくとも食べて寝てない奴にアフリカを理解することは出来ないだろうな、と思わせるに充分な2冊である。

アフリカの現実を、希望を、絶望を、とてもよく捉えた本だと思う。鞭で打たれたり、強盗に殺されかけたり、食あたりで死にかけたり、アフリカの文字通りのハードボイルドな一面も体当たりで体験しながら、同時に消えつつある古き良きアフリカの伝統、今なお残るアフリカの良さ、そしてアフリカの悪さや問題点も切り取ってみせてくれる。

それでいて著者は、異文化エッセイにありがちな「その点、日本はダメで……」「日本に失われた美徳がアフリカには……」的な薄っぺらい文明批評を語ることもない。これは俺にはとても大事なことなのだ。あまりにもバックグラウンドの異なる日本と外国とを安易に比較し、すぐに日本を批判して満足しちゃうような日本嫌いの外国大好きっ子――こいつらが俺は大嫌いで、この種の人間の書いた本を読むと、俺は一気に萎えてしまう。もちろん異文化理解には愛情や寛容さや相手のバックグラウンドに対する理解が絶対に必要ではある。しかし、それと同じくらい、距離をとれるバランス感覚も必要不可欠だと強く思うのである。

まあ、考えさせられるも良し、ふわふわとアフリカに漂うも良し。オススメです。