安藤哲也『本屋はサイコー!』

著者は、Webでも話題を呼んだ往来堂書店の元店長にして、現在はオンライン書店bk1の店長。自分が往来堂書店の店長に就任し、bk1の店長になるまでのエピソードや自分の本屋をめぐる考えが中心。本書を読むと、著者は出世したな〜と思う。本人は否定するかもしれないが、立派なサクセスストーリーだ。

「町の本屋」が大型書店と戦うには、書店員のパーソナリティを前面に押し出して個性的な本屋を作っていくしかない、というのがこの人の持論である。全くもって正論だ。俺は本好きで本屋好きなので、平均すると1日に2つくらいの本屋に行く。近所の気に入っている本屋などは毎日のように行っている。これだけの数の本屋を頻繁に訪れていると個々の本屋の微妙な違いもわかるが、オリジナリティが前面に押し出されている本屋はそう多くはない。結局、月に何度か梅田のジュンク堂や紀伊国屋や旭屋といった大手に行くことになるが、その方が新しい発見もあるのである。

品揃えでは大型書店に負けるのだから、その本屋なりのコンセプトやオリジナリティを打ち出していく必要がある。そのために著者は「文脈棚」という方法論を主張している。どの本を買う人が、どの本に興味をもって一緒に買う可能性があるのか、それを見極めて、その本の本来のジャンル以外の場所にも本を置いて、その本屋独自のフェアを展開させていくのである。なかなか面白い考え方だと思うのだが、それが出来ている本屋を見たことはほとんどない。往来堂を俺の近所にも作ってほしいと思う今日この頃だ。