大前研一『ビジネスウエポン――生き残りたいサラリーマンのための発想術』

「サラリーマン・サバイバル」シリーズ第4弾。第4弾ともなると、良くも悪くも同じような物言いが目につくようになってきた。まあ、それだけ普通の人がいつまで経っても大前研一の要求する水準に到達しないということだろうけれど。そのことを除けば今回も内容は申し分ないし、読むと士気も上がる。

ただ、P238以下における木村剛に対する評価は、少し認識違いではないだろうか。「事業会社を潰してまで銀行を救おうとしているところが、さすが元日銀マンだと思う」「銀行そのものが経済混乱を来した現況なのだ」と大前研一は書いている。しかし木村剛は、公益も追求すべき銀行が、潰すべき問題企業を延命させて不良債権を増大させておきながら、その帳尻合わせのため、中小企業に対する歪んだ諸策(過剰な担保と高い金利による貸し付け・貸し渋り・貸し剥がし)を行う現状には大きな問題があり、銀行には大きな責任がある――といったことを主張しているように俺は理解したからである。

とはいえ、大前研一も木村剛や竹中大臣の基本的な政策自体は評価している。というか、もう10年も前に「駄目な銀行は退出しなさい」と言い、そのやり方も著書で示しているらしい。うーむ、カバーしている領域の広さとバイタリティは半端じゃないな。脱帽。