淡輪敬三『ビジネスマンプロ化宣言』

著者は外資系の人事コンサルファーム「ワトソンワイアット」のトップ。本当は1年以上も前に読んでおり、また線を引き引き何度も何度も読み返しているのだが、感銘が強すぎて今までは感想を書くに書けなかった本である。本書を読んで俺はアカデミズムへの未練をほぼ断ち切り、ビジネス社会にフィールドを移そうと決意した。前回の『文明の大陸移動説 神の物々交換』と並び、今までの人生で俺が最も影響を受けた本の1つである。個人的には超必読。

内容は、いわゆる自己啓発本の類である。権益型のビジネスモデルも会社に終身雇用を期待する生き方も既に崩壊している現代において、いかに1人のビジネスパーソンとして振る舞えば良いのか。プロフェッショナル人材が会社に求めるべきものは、もはや安定でも既得権益でもなく、その会社がなくなっても立ち回れるだけの実力を身につけられる「場」の提供にある。もしその「場」がないなら、自分をプロフェッショナルに変革し、社内を変革し、別の会社に移ることも視野に入れながら、自律した自分シナリオを描くべきだ――というアウトラインで、大きくは外していないはずだ。

もちろん内容はとても素晴らしいと思う。俺は線を引き引き何度も読んだし、また折に触れて読み返すたびに新たな発見がある。ロジックもレトリックも俺の好みに合っているし、日本と日本人に対する暖かな視線も好きだ。ただ、この種の本は内容自体もさることながら、むしろ「どこまで内容を自分に引きつけて内面化しつつ読めるか」が大事だと思う。だから本書を読んで「一般論に過ぎない」「理想論だな」なんて反応が出てきても別に全く不思議ではない。自分の強みを見つけろ、会社に依存するな――というのは大前研一だって述べているし、他の色々な人も述べているのだから。俺自身は自分の進路に迷っていたときに出会った本でもあり、「マイ・ベスト・ブック」として本書の主張と深いレベルで共振したが、こうした本は、それぞれが自分の1冊を見つけていくものであろう。