インキュベ日記

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村上春樹『辺境・近境』

辺境・近境 (新潮文庫)

辺境・近境 (新潮文庫)

村上春樹の旅行記。近境とは「近くても見落としがちな異界」を指している造語だろうか。今回は、モンゴル草原や北米横断・1ヶ月に及ぶメキシコ滞在といった明らかにハードボイルドな旅だけでなく、瀬戸内海の無人島「からす島」や震災の爪痕残る神戸といった地理的に近い場所も訪れている。それどころか、「讃岐・超ディープうどん紀行」は香川で3日間ひたすら讃岐うどんを食べ歩くという企画であり、確実に「近境」へと足を踏み入れていると思う。
ちなみに俺も2002年9月に友人と香川に旅行して、讃岐うどんを3日間食べまくったのだが、やはり異界だった。うどん屋さんは確かに恐ろしく多い。というか多すぎる。でも面白いことに、近所の馴染み客はうどん屋さんでうどんを頼まず、おでんやカレーを食べていたりする人もけっこう多い。
それもそのはず、讃岐うどんを「特別なもの」として有り難がっているのは外から来ている人だけで、香川の人にしてみれば讃岐うどんは日常食でありファーストフードなのである。モーニングセットのような感覚で朝から讃岐うどんを食べ、(俺らの)たこ焼きやお好み焼きやマクドのように学校帰りの学生がおやつ感覚で食べ、ジジババが憩いの場として利用しつつ食べ、リーマンが昼休みや仕事終わりに食べ――と、もう完全に生活の中に溶け込んでいた。確かに安いしねえ。安いところは1杯100円とかだし。