インキュベ日記ベストセレクション2003

“極私的”年間ベスト 競争原理と教育原理と経済原理

2003年はとにかく村上龍が書いたり編集したりした本をたくさん読んだが、JMM(村上龍の主催するメールマガジン)の旺盛な活動が今のカンブリア宮殿に繋がっていると考えると、なかなか興味深い。個人的には、経済の発想を教育に持ち込んだ上記3冊は白眉と言って良い。フリースクールを見学して感じた「競争」に対する批評を『JMM VOL.9 少年犯罪と心理経済学』で書いていたが、これは本当に物凄く深いと思う。

村上龍『「教育の崩壊」という嘘』

村上龍・編『JMM VOL.8 教育における経済合理性――教育問題の新しい視点』

村上龍・編『JMM VOL.9 少年犯罪と心理経済学――教育問題の新しい視点2』

村上龍 諸々

上記以外にも村上龍の本はかなり読んだなあ。正確にはブログを始める前に読んだ本を徹底的に読み返したものが多い。龍の小説は、世間的には『コインロッカー・ベイビーズ』が最も高い到達点だとされている。俺も『コインロッカー・ベイビーズ』は大好きだし、その世間的な評価を到達点を否定するつもりも毛頭ない。ただし世間的な評価と自分の好みには若干の齟齬がある。例えば「トパーズ」などはあまり好きにはなれないし、『コインロッカー・ベイビーズ』以上に『五分後の世界』と『ヒュウガ・ウィルス』がどうしようもなく好きだ。またノンフィクションについては、金融と経済についての幅広い論考を集めた『啓蒙的なアナウンスメント』も良かった。当初は「小説家が経済かぶれになっちゃって……」という冷ややかな目で見ていたきらいもあったが、今は、凄く勉強になっている。

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』

村上龍『愛と幻想のファシズム』

村上龍『五分後の世界』『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II』

村上龍『啓蒙的なアナウンスメント 第1集――金融・経済』『啓蒙的なアナウンスメント 第2集――世界の現状』

村上春樹 諸々

村上春樹+安西水丸『ランゲルハンス島の午後』

村上春樹の本の中でもほとんど注目されていないと思うが、わたしはこの本が好きでねー。

石原千秋の受験国語シリーズ

高校入試の国語の小説編と評論編、大学入試の国語の小説編と評論編をそれぞれ出版。どれも物凄く読み応えがある。

石原千秋『秘伝 中学入試国語読解法』

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石原千秋『小説入門のための高校入試国語』

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石原千秋『評論入門のための高校入試国語』

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石原千秋『大学受験のための小説講義』

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石原千秋『教養としての大学受験国語』

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NHKさんありがとうございます

NHKは、運営体制(主に集金体制)などに耐え難い不信感があるものの、良いものを作っているなと思う。これらはNHKがテレビ番組として放送したものを書籍化したものだが、物凄く面白い。

相田洋『NHKスペシャル マネー革命』全3巻

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NHKビジネス塾編集委員会『NHKビジネス塾の教科書』全5巻

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その他

宮本輝『錦繍』

宮本輝の最高到達点という声も聞くが、同意しかない。何度読んだことか……。

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荒俣宏『文明の大陸移動説 神の物々交換』

比較文化論って面白いなーと学生時代にしみじみハマった極私的大傑作。これまで何十回と読み返したな。

淡輪敬三『ビジネスマンプロ化宣言』

ビジネスの世界で生きようと決心させてくれた本で、これも何十回と読み返した。著者からブログにコメントがついたのは一生の誇り。

佐々木直彦『キャリアの教科書』

自分のキャリア観の礎になっていると思う。エンプロイアビリティ(雇われるチカラ)を高めることなく被害者意識だけを振りかざしてウダウダ言う奴には本書を読ませたいが、もうそういう奴は今さら本書を読んでも治療不可能だろう。そういう意味で本書のような位置づけの本は試金石になるんだろうな。この手の発想を階級社会だのブラックだのと批判するのは勝手だが、結局のところ、福祉がどう発展したところで、より良い報酬や仕事内容・やりがい・ポジション・権利などを手に入れようとすれば、それなりの努力が要るし、それがないなら本来、給料など物価指数以上に上がってはならないと思う。それが我々の捨ててきた家族的経営・終身雇用というものの本質だ。家族的経営や終身雇用の面倒くさいところは嫌だと言って、でも仕事内容も能力も果たすべき職責も変わらないのに給料が上がるというのは、それはもう筋が通らないんですよ。

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