- 作者: 吉田春生
- 出版社/メーカー: 彩流社
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
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俺は、ティム・オブライエンやマイケル・ギルモアの著作をまだ読んでいない。しかし『ねじまき鳥クロニクル』で提示された暴力性との対峙に対しては、どうもピンと来ないものを個人的に感じていたので、本書は非常に説得的に感じている。また、本書の『ねじまき鳥クロニクル』に対する批判的なロジックを受容するならば、その後『アンダーグラウンド』を書く理由も、そこで地元の阪神大震災ではなく、地下鉄サリン事件を取り上げた理由も、確かに綺麗に繋がっていくように思われる。
本書も(前回や前々回と同じく)インキュベ日記を始める前から読んでいた本だが、村上春樹の小説世界に興味があるなら、良い本だと思う。素材とモチーフとテーマといった言葉を手がかりに読み進めていくのも面白い……が、素材・モチーフ・テーマといった語が定義されていない(と思う)ので、それは残念だった。
ちなみに、巻末の著者註では、『ウォーク・ドント・ラン』について、
村上春樹が対談中、同一の差別語を口癖のように何回か発しているためだろうか、絶版状態となっている。
と記してあった。前に読んだ時は全く気づかなかったので、今度また機会を見つけてチェックしたい。(ちなみに、絶版なので、俺も『ウォーク・ドント・ラン』は持っていない。)