斉木豊+関戸美穂子『はじめてみようローフード生活』

はじめてみようローフード生活

はじめてみようローフード生活

ローフード(raw food)とは、生肉や生魚、生卵をガシガシ&グチャグチャ食べるワイルド極まりない健康法のことである――というのは、ガセ。「……うそつき!」
スマン、知らん人には全く知らんネタ使ってもうた。ローフード(raw food)とは「新鮮な素材を火を通さずに食べることで、食物のビタミンやミネラル・食物酵素を効率よく摂取する食のスタイル」と定義できるであろうか。
特徴としては、まず(名前の通り)加熱した食材は摂らない。加熱する場合も48度以下の温度で調理し、それ以上の温度で加熱した場合は、酵素が破壊されるので食べない。加熱調理は生食と対置して「火食」と呼ばれ、不健康や病気を引き起こす悪の根元として位置づけられている。いかなる場合も火食は駄目なんだそうだ。精白した穀類なども、食物酵素の死に絶えた食物であり、食べない。「イノチ」がないんだってさ。
また、野菜や果物・種子などを中心に食べ、たとえ生であっても、肉や魚介類・卵・乳製品などは食べない。その最も大きな理由は、動物性の食物は消化に悪いから。消化が悪いと、体内で発生した毒物が「宿便」として大腸内に溜まり、毒物が大腸内で再吸収され続けるという悪循環を生み出すのだそうだ。(ただしチーズやバターなどは植物から代用品のようなモノを作っている。)
全体的に興味深かったが、よくわからない点もある。調査や研究の成果を元に論が展開されることも多いが、その詳細なリソースが示されないこともあり、医学的な根拠や妥当性が本当にあるのかどうかが読み手に判断できないこともある。例えば、動物性食品からしか摂取できないタンパク質だったか必須アミノ酸だったかが存在する――と中学校で習った気がするが、植物から得られるタンパク質だけで本当に大丈夫なのだろうか。野菜にタンパク質が多く含まれていることは示されても、「生の野菜や果物だけで生命活動に必要なタンパク質や必須アミノ酸を本当に得られるのか」「日常的にハードな運動をしている人も、生の野菜や果物から得られるタンパク質だけで問題ないのか」といったことは書かれておらず、肉や乳製品・炊いた米を全く摂取しないことに対する本質的な不安は解消されない。
あと、発酵食品に対する取り扱いもよくわからない。例えば本書では、発酵食品は体に良いとして、リジューベラックという小麦の発酵ドリンクが紹介されている。日本の伝統的な発酵食品が体に良いというのは、直感的に理解できるが、例えば、醤油や味噌・納豆などは作る過程で火を通している。火を通している「火食」なのに、発酵させたら食べても良いのだろうか。それなら、別に生でなくとも酵素があれば良いということか。
さらに言えば、精製された砂糖(白い砂糖だけでなく黒砂糖も含む)は悪の親玉のごとき扱いを受けているのに、同じく大半が精製されている塩は、特に注意書きもなく「調味料」として使って良いというのも、疑問。
このように、細かく見ていけば理論(?)的に気になる点がたくさんあるので、あえて疑問点や不満点ばかり書き出してみたが、野菜中心の食事が体に良いことは直感的に理解できるし、火を通さないので調理も楽そうだ……というので、実はローフードのことは以前から気になっている。つーか気になっていなければ、こんなマイナーな本わざわざ買わんよ。いきなり100%ローフードというのは現実的に無理だが、「ローフードの日」や「肉なし日」を設定して少し様子を見てみようかな……と考えているところ。