大庭賢哉『トモネン』

トモネン

トモネン

本書は著者の初単行本であり、現在まだ本書しか出ていないから、大庭賢哉の名前を知る人はまだ少ないと思う。俺も全く知らなかった。たまたま書店で見かけて「ジャケットの印象」と「帯に寄せられた小田扉のコメント」で衝動買いしたわけだが、マイブーム確定の大正解の作品だった。やわらかく絵柄とあたたかいストーリーは、読んでいてとてもやさしい気持ちになる。Amazonではスタジオジブリ的だと評している人もいたが、確かに当たらずとも遠からずといった感じで、これらの印象はどことなくスタジオジブリにも通ずるところがあるかもしれない。
なお、俺は漠然と「絵本」といったイメージを想起したのだけれど、著者は漫画家としては本書が初単行本ながら、イラストレーターとして既に活躍されており、絵本や児童書のイラスト・挿絵では既に何冊かの本も出しているようだ。なるほどなるほど、俺の第一印象も「当たらずとも遠からず」であった。
収録作品は同人誌に発表された作品と書き下ろし。同人誌では積極的に出しているらしく、また「リーザの左手」はアフタヌーン2002年8月号で掲載されている。どの作品もとても良いけれど、とぼけた見習い魔女の魔女子さんを描いた表題作「トモネン」や、ある特別な能力を持った少年と1人の少女の交流を描いた「リーザの左手」、メルヘン大爆発な「ぬい氏の日常」あたりが俺は特に好き。
やさしい漫画やあたたかい漫画を読みたい人、漫画のポジティブでやさしいチカラを感じたい人、ジャケットにピンと来た人は、買って損はない。もっともっとたくさん単行本を出してほしいと思う漫画家。大注目。