田口元+安藤幸央+平林純+角征典+和田卓人+金子順+角谷信太郎『Life Hacks PRESS デジタル世代の「カイゼン」術』

Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~

Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~

  • 作者: 田口元,安藤幸央,平林純,角征典,和田卓人,金子順,角谷信太郎
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2006/03/23
  • メディア: 大型本
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「百式」管理人の田口元などによる編著。
「hack」というのは、プログラマが自分の仕事を効率よく片づけるために組んだ自分だけのための小さなプログラムのことを指す技術用語だそうだが、それを仕事全般や生活全般に広げた「自分だけのやり方」を「lifehacks/ライフハック」と呼ぶらしい。わかるようでわからない定義だが、様々な定義があり、あまり定義も固定的なものではないようだ。「仕事や生活を効率よくこなすためのちょっとした工夫」くらいに考えれば良いように思う。
そしてその「lifehacks」の代表格とも呼べるものが、本書で主題的に取り上げられている「GTD」という考え方/手法である。「GTD」とは、David Allenの著書『Get Things Done』の略称であり、要は、自分の頭を「最も信頼できないもの」だと考え、やるべきこと(ToDo)を記憶に頼ることなく、全て(これは大げさでなく数時間に渡って集中して机に向かって)書き出すことで、「ここにあるリストをやれば良いのだ」とスッキリした状態でToDoをこなすことに専念する――といった考え方・手法であろうか。やり方がシンプルで、対象を選ばず(仕事にも生活にも趣味にも使える)、ツールを選ばない(メモ帳・手帳・裏紙・PDA・エクセルなど何でも良い)点が、世界の「lifehacks」系ブログで絶賛されている理由だそうだ。
「GTD」で重要なことは、とにかく「気になったこと全て」を書き出すことである。その中で本当に要らないものは「ゴミ箱」に入れ、今すぐ(2分以内に)できること(例えば「爪を切ること」で、爪切りがすぐ手元にある場合)は、今すぐやってリストから消去する。そして残りを、下の5つのリストに振り分ける。

  • 「いつかやること/多分やること」リスト
  • 「資料」リスト
  • 「プロジェクト」リスト
  • 「連絡待ち」リスト
  • 「次の物理的なアクション」リスト

まず、「ゴミ箱」に入れるほどではないけれど、さしあたって具体的にアクションを起こす必要のないものは、「いつかやること/多分やること」リストか「資料」リストに振り分ける。そして具体的なアクションが複数ある場合は「プロジェクト」リストに振り分けて別途進捗を管理する。前述の通り2分以内に実行可能なものは今すぐ実行してリストから消去する。また、自分でやるべきでないことは、誰かに依頼をした上で「連絡待ち」リストに入れる。そして自分でやるべきで、具体的なアクションが1つである場合は「次の物理的なアクション」リストに振り分ける。特定の日付に行う必要のある場合は、この時点でカレンダーにも忘れずに記載する。また、誰かに依頼するべきなのに依頼していない場合は、「連絡待ちリスト」ではなく「次の物理的なアクション」リストに振り分ける――といった感じだろうか。文章で書くとわかりづらいかもしれないが、チャートで一覧すると、非常にシンプルでわかりやすい振り分け方である。
俺はケータイのメモ帳機能で、日々の生活で気になった点やToDoや欲しい本のリストをつけている。しかし重要性や緊急性が低下し「これはもう良いかな」と思ったことは、リストから外し、しばらくしてまた「やっぱりこれはやらなきゃ」と付け加える――といった不毛なプロセスを繰り返すことが何度もある。しかし「GTD」では、こういった重要性や緊急性の低いリストも消去することなく、「資料リスト」か「いつかやること/多分やること」リストに入れて保管している。また、依頼したことを「連絡待ち」リストに入れている。これら2つは俺の経験上、ToDo管理ではけっこう大事なことだなと納得できる。というのも、気になることのリストを本当に全て書き出すことに成功できた場合、「そういえば……」がほとんどなくなるからである。この「そういえば……」は、時と場所を選ばずやってくるので、集中したいとき/集中しているときの大きな障壁である。「GTD」を実践できたときは、仕事や日々の生活で、絶大なる効果をもたらしてくれそうである。
俺は今までもケータイのメモ帳やPCでToDoを管理していたこともあり、今後は今あるToDoを「GTD」的に活用してみることにしたが、しかし、この「気になったこと全て」を書き出すのは、思った以上に難しい。終わったと思っても、トイレに行っている間に「そういえば……」と新たに思いつくことが何度もある。これは慣れるまで大変そうだ。
本書で取り上げられた「lifehacks」や「GTD」の考え方はシンプルで使いやすいと思うし、googleの全サービスの解説なんかも面白かった。ただ、本書で少し(というか大いに)気になったのは、用語の定義についてである。まあ本書の内容自体はわかりやすいし、本書を読めば「lifehacks」の考え方も「GTD」の考え方もきちんとわかるようにはなっている。しかしこういったムック本では、もっと明確に「lifehacks」や「GTD」とは何かを、冒頭でビシッと書くべきだ。今まさに仕事や生活に追い立てられている人がこの種のムック本を手に取ることを考えると、各項の冒頭で(一文程度の)定義を明確に書いていないのは、構成として致命的であるように思う。