いがらしろみ『いがらしろみの果物でつくるコンフィチュール』

いがらしろみの果物でつくるコンフィチュール (生活実用シリーズ)

いがらしろみの果物でつくるコンフィチュール (生活実用シリーズ)

本書の内容とは関係ないが、新宿ルミネ2にあった青山ブックセンターが潰れ、ブックファーストが入ってきたときは、マジで「ふざけんな」と思ったものだ。しかし、だんだん面白い本をセレクトして置いてくれるようになった気がする。同じ建物にある本屋・ヴィレッジヴァンガードの存在が良い刺激になっているのかもしれない。高感度な女性をメインターゲットに据えているのか、雑貨やオシャレな料理やインテリアやデザインの本がけっこう多い。本書は新刊・話題書の棚の中でもひときわ目立っていて、友達のいない孤独な田舎者がハイセンスな雰囲気に憧れを抱いて勘違いをするには十分で、料理全般ぜんぜん作れないのに気がついたら買ってしまっていた。
コンフィチュールとはジャムのこと(フランス語で「砂糖煮」の意)。本書は、ゆったりとした「手作りの良さの残るジャム」にとことんこだわっている。作り方は素っ気ないほどにシンプルで、正直「もっと色々おいしく作るためのポイントやこだわり・うんちくを書いてくれ」と思うし、作られたジャムをこんな風に使ったら、という大胆な提案も俺から見ると少ないように思う。
けれど、使われているジャムの材料は、いちご・バナナ・レモン・キウイ・グレープフルーツ・オレンジ・アプリコットルバーブ・チェリー・桃・ブルーベリー・洋梨・パイナップル・フランボワーズ・マンゴー・いちじく・栗・りんご・ゆず――と、とてもバラエティーに富んでいる。パイナップルやグレープフルーツなんてジャムというイメージはゼロだし、ルバーブやフランボワーズなんて見たことも食ったこともない。栗なんてそもそも果物じゃないだろう。ま、ジャム=果物じゃなければならない、ということもないのかな。
孤独な東京生活を続けるうちに、最近「幸せな人生とは」とぼんやり思うことが増えてきた。もちろん答えなど出るはずもないが、少なくとも「幸せな人生」に「幸せな食生活」は欠かせないだろう。ハッピーフード、ハッピーライフである。グルメ雑誌の食べ歩きも趣味ではないが、かといって毎日同じ店で同じものをガツガツ食っているのも能がない。とりあえず本書をぱらぱら眺めてゆらゆらとした幸せな気分でいっぱいになって、著者のジャム専門店からお取り寄せをしてみたい。