『時効警察』2巻

時効警察 2巻 [DVD]

時効警察 2巻 [DVD]

資料整理および遺留品の返却をする時効管理課でまったりと働く霧山修一朗(オダギリジョー)が、三日月しずか(麻生久美子)と一緒に、時効を迎えた事件をあくまでも趣味で捜査する――という一話完結モノのコメディーミステリー。テレビ朝日の深夜ドラマのコメディーである点、推理モノではあるが謎解きそのものを重視するわけではない点、膨大に配置されたトリッキーで細かいネタがちょいちょい伏線になっている点など、特徴が『トリック(TRICK)』に似ており、俺の非常に好きなタイプのドラマである。
DVD第2巻には以下のエピソードを収録している。

#3「百万人に無視されても、一人振りむいてくれれば人はしあわせ…じゃない?」
#4「犯人の575は崖の上」

本作の魅力は多々あるが、1点だけ挙げるならば、とにかく「時効になって逃げおおせた犯人を警察官が趣味で追いかける」という倒錯じみた設定の妙に尽きる。推理モノは得てして「事件に居合わせているのか、探偵や警察官が殺人事件そのものを呼び寄せているのか、よくわからなくなる」といった主客逆転現象に陥りがちだが、本作の設定はその隘路を見事に回避している。また犯人を見つけたところで(そもそも時効なので)警察に突き出すこともなく、「誰にも言いませんよ」カードを犯人に差し上げるだけ――という軽やかな設定が、時として、逆に犯人が逃げおおせた15年という時間の重みを出しているようにも思う。特に第3話ではそれがよく出ている。
第3話は、政治家への不正献金問題でマスコミの攻撃を受けていた丸閥商事の社員・町田拓二(大西武志)が、センター東駅のホームから転落、電車に轢かれて死亡した事件の(趣味の)捜査である。同じホームで電車待ちしていた藤沢郁也(田中哲司)も不正に関与していた疑いがあり、それに感づいた藤沢が町田を殺したという説も出てきたが、駅売店の店員・道子(緒川たまき)が事故死だと証言。不正そのものも政治家の力でもみ消された形になり、殺人の疑いは消えたまま現在に至っている。しかし道子の証言はどこかおかしく、しかも藤沢と道子は結婚していた。普通、共犯者であれば距離を置きたくなるのでは……と逆に怪しさを抱く。結局、霧山の追求にも道子は全く動じず必死に否定するが、霧山の仮説を聞いた藤沢は罪を認め、自白を始める(本作はあらかじめ犯人がわかっている倒叙物なので、別に犯人を書いても構わないであろう)。まあ藤沢はそもそも時効なので警察に突き出されることもなく、「誰にも言いませんよ」カードを渡して一件落着――というオチなのだが、第3話の真の見所は、その後の藤沢の独白である。
「誰にも言いませんよ」カードを手渡す霧山に「ほんっとうにただの趣味なんですね」と藤沢が感嘆し、一瞬いつものまったりとした空気が流れる。しかし立ち去ろうとする霧山と三日月に藤沢は声をかけ、本当は「ずっと誰かに真実を知ってほしかった」と、過去の罪を暴き立てた霧山と三日月に対して感謝の言葉を述べる。そして自分にとって「罪」と「15年という時間」が一体どういった位置づけであったのか、心の奥底を吐露するのである。この瞬間、単なるコメディーを超えた奥深い物語構造が本作に生まれる。ある意味「感動的」とも表現できる深い瞬間であった。必見!
一方、第4話には第3話ほどの奥深さは無い。無いんだけれど、コメディーとしてはかなり面白い。永作博美が面白い演技をしているんだなあ。永作博美の配役は、2時間ドラマ・シリーズ『THEアネゴ探偵・寂水先生が行く!!』の主演女優・アヤメ旅子。殺人事件の容疑者として疑われたというスキャンダルを糧に芸能界でのし上がってきたアヤメ旅子は、自分が犯人なのに、芸能界で生き残るため、霧山を利用して再度15年前のスキャンダルを自分に呼び込もうとする。そのタレント的な強欲さ、そして実に2時間ドラマ的なベタベタな演技。永作博美は実に巧い。
ちなみに第3話では、緒川たまきのエロスも垣間見られる。これは個人的にかなりツボ。第3話といい、第4話といい、DVD第2巻は『時効警察』屈指の面白さである。必見!