村上春樹『バビロンに帰る ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック2』

本書は『マイ・ロスト・シティー』『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック」に続く、村上春樹スコット・フィッツジェラルドに関して出版した3冊目の本である。村上春樹にとってスコット・フィッツジェラルドはまさに宿命的な作家であり、傑作短編からほどほどの短編まで、村上春樹なりの信条で幅広く翻訳している。
ところで俺にとっては、村上春樹こそが数少ない宿命的な作家なのだが、村上春樹の翻訳については、本当に巧いなと思うし、翻訳家としてのスタンスにも感服するし、翻訳された作品も凄いと思うのだが、なぜかスコット・フィッツジェラルドレイモンド・カーヴァートルーマン・カポーティもC・V・オールズバーグも今のところそれほど心惹かれるわけではない。マーク・ストランド『犬の人生』に至っては全く合わなかった。まあ村上春樹スコット・フィッツジェラルドは、文体もテーマも考え方も生き方も全く異なるわけだし、俺と村上春樹も、少なくとも生き方は全く異なる。「人間性や考え方が同じだからといって惹かれるわけではない」という事実は、当たり前だが、よくよく考えると不思議だ。