『坊っちゃん』の時代 第4部 明治流星雨―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (第4部)
- 作者: 関川夏央,谷口ジロー
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 1995/04
- メディア: コミック
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大逆事件(幸徳事件)とは、控えめに見てもせいぜい3〜5人が関わったに過ぎない、粗雑で夢想的な明治天皇殺害計画(手投げ爆裂弾による襲撃計画と爆弾の実験)を、社会主義者やアナーキスト弾圧の口実として用いて、この計画と全く無関係な人間を含めた24人に死刑判決を下し、うち12人が数日後に処刑された事件のことである。この大逆事件は、当時の刑法に則っても、今の常識から考えても、異様な「事件」としか言いようが無い。
武者小路実篤、正宗白鳥、永井荷風らは、口ごもったような調子の作品で自らの感想を示したが、それはまさに不思議な事件だった。どう考えてみても大部分の被告たちは、その行動によってではなく、その思想によって処刑されたとしか受取れなかったので、沈黙を守った作家たちもひとしく不吉な衝撃を味わい、このとき日本の青年期たる「明治」は事実上終焉した。そして日本と日本人は、昭和二十年の破局に至るレールの上をたしかに走り始めたのである。
本書を読む限り、大逆事件はまさに時代の転換点たる「事件」であった。本書は難しい問題にチャレンジしたなあ。しかし素晴らしい漫画として仕立て上げることに成功している。予備知識が全く無くとも、この事件が異様であることを感覚的に理解できる。もっと詳しく知りたい事件だと思った。