森田英一『「3年目社員」が辞める会社 辞めない会社』

「3年目社員」が辞める会社 辞めない会社 若手流出時代の処方箋

「3年目社員」が辞める会社 辞めない会社 若手流出時代の処方箋

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』という本がブームになっており、第二新卒に対する注目度が上がっているようだ。ブームに乗るのは好きではないけれど、「他人事ではない」と手に取ってみた。今まさに若手社員である俺にとって目新しい発見はそれほど多くないが、よく若手社員の実情や実感を掴んでいると思うし、少なくとも議論のピントはズレていない。
例えば、「最近の若い者は……」的な世代論と社員と会社のミスマッチ論は、(間違ってはいないけれども)そこに帰結するだけでは問題が解決しない――といった意味合いのことを本書の冒頭で述べているが、全く同感である。あらゆる現象において、世代論に帰結しても生産的な解決策が導き出せることはほとんどない。また学生のほとんどは正社員として就業したことがなく、それを前提に就職セミナー・応募・面接・採用といったプロセスが行われているのだから、昔だって多かれ少なかれ両者のミスマッチは存在したはずである。
本書では、若手社員が辞めていくタイプを5つに分類している。

  1. 「最近の若い者は……」――打たれ弱いタイプ
  2. 「自分はこれでいいのかなぁ……」――悶々タイプ
  3. 「厚化粧採用」の果てに――聞いてないよタイプ
  4. 「やっぱり自分に正直に生きよう」――正直革命タイプ
  5. 「転職は成長のステップ」――次のステップタイプ

例えば1についての対策は明確であり、「1回注意したらすぐ辞めるような人間」や「客に1回怒られたら出社拒否になってしまうような人間」を雇ってしまう採用側のプロセスに問題がある。こういった特殊な事例を取り上げて安易な世代論に収束させがちな人間も多いが、この種の人間は今も昔も存在したし、今だって少数のレアケースである。あまり若者を馬鹿にしてもらっては困る。
また5については、(短期間でのキャリアアップのための転職をも辞さない)強い上昇志向・独立志向を持った人間を受け入れるべきか、といったスタンスを明確にしなければならないと思う。5のタイプは成長意欲や難度の高い仕事への意欲も高いと思われるが、もし5のタイプを積極的に受け入れるならば、彼らが流出しないための対策を行うべきだし、そして同時に、ある程度の流出を覚悟すべきであると俺は思う。
そして2・3・4への対策については、本書で挙げられたポイントを引用したい。

成長実感を持てるか
存在意義の実感ができるか
成長期待ができるか

リアルタイムで3年目社員である俺にとって上記3点は何の違和感も無いのだが、改めて振り返ると、この指摘をちゃんとしている本やレポートは意外に少ないかもしれない。ただ、これは若手社員にとってはメジャーな発想である。逆に言うと、こういったことが前提的に了解されていない企業から若手社員がどんどん抜けていくのは致し方ないという気もするし、実際そうなっていると思われる。そしてこれからも今以上のスピードで若手社員は抜けていくだろう。