ウダヤン・グプタ『アメリカを創ったベンチャー・キャピタリスト 夢を支えた35人の軌跡』

アメリカを創ったベンチャー・キャピタリスト―夢を支えた35人の軌跡 (Harvard Business School Press)

アメリカを創ったベンチャー・キャピタリスト―夢を支えた35人の軌跡 (Harvard Business School Press)

アメリカを代表するベンチャーキャピタリスト達のインタビュー集。569ページもある大著であり、とにかく分厚い。まあ大成功した人が大成功した経緯を語るのだから、良かれ悪しかれ示唆的で教訓的になってしまうものなのだが、みんなそれぞれ良いことを言っている。中でも俺が気に入ったのは、サンフォード・ロバートソンという人物だ。この人は非常にエネルギッシュで、野心に満ち溢れ、投資業務を愛し、そして自身の手がけたベンチャー・キャピタルという業態がアメリカを大きく発展させてきたことに誇りを抱いている。さらに正直な言葉と辛辣な言葉を持っている。それらが以下の引用から垣間見られるだろう。

投資銀行業務ほどすばらしい仕事はない。会社運営の些事にかかわることなく、会長の視線でものごとを眺めていられる。「この会社は気に入った」とか「あそこは気に食わない」などと言って、全能の神になった気分もいくらか味わえる。マーケットの手強さも魅力の一つだ。世の中のありとあらゆること――政治、経済、社会のあり方、世界情勢――がマーケットに反映される。ビジネスにもいろいろあるが、投資銀行は奥が深い。
新規参入組が同じように感じているかどうかは、あやしいところだ。彼らは高収入が得られるということで、ふらふらとこの業界に入ってきたのだろう。若手のなかには投資の醍醐味を愛し、案件の取りまとめや投資にふさわしい思考が遺伝子に組み込まれている者もいる。だが、そうした天性の素質に恵まれた人材は、一定の割合しか存在しない。残りは非常に優秀で、あらゆるテクニックをビジネススクールで教わってきてはいるが、投資業務が好きだからというよりも、金儲けが目的でこの業界にいる連中だ。ビジネススクールの新卒者御一行様は、まずは投資銀行を目指し、次いでベンチャー・キャピタリストに憧れ、お次はLBOファンドをやりたがり、こんどは右へならえでインターネット関連のスタートアップ企業に入りたがっている。

まあ説教くさいところも、こういった重鎮の魅力である。