渡辺浩弐『夢ビデオ 2000年のゲーム・キッズ2』

夢ビデオ―2000年のゲーム・キッズ〈2〉

夢ビデオ―2000年のゲーム・キッズ〈2〉

「仮想科学小説」と題した一連のシリーズ。本書の発売は1997年だが、仮想科学小説シリーズ自体は90年代初頭あたりから『週刊ファミ通』で連載を始めたはずで、よくもまあアイデアが尽きないものである。まあ本シリーズほどワクワクするような科学技術が1999年や2000年に実現したわけではないけれど、かといって本シリーズほどシニカルな未来が到来したわけでもない。大部分は、退屈で予測可能な範疇の「未来」だったわけだ。
ただ、実はリアルタイムで体験しているから構造や生活スタイルの変化に気づいていないだけ、という見方も十分できるだろう。例えば携帯電話やニンテンドーDSニンテンドーDS Liteといったモバイルコンピュータの機能は、少なくとも一昔前のSFが思い描いた想像力に追いつき・追い越しているのではないだろうか。インターフェースにしても、おそらくiPod shuffleはあれ以上小さくしたら紛失するからクリップ大の大きさに留まっているのだろうし、携帯電話の小型化もあれ以上小さくすると番号を押せなくなるから今のところ限界であろう。
特に携帯電話はデザインもどんどん洗練されているし、手の中にスッポリ収まる100グラムの機械が、電話・メール・ブラウジングデジタルカメラ・テレビ・ラジオ・音楽プレーヤー・ICレコーダーの機能を持ち、小さなチップで数GBのデータをやり取り可能で、さらに電子マネー機能も搭載し、チケットや入退室認証の代わりも「お茶の子さいさい」なのである。ノートパソコンやPDA顔負けの処理能力やアプリケーションソフトを備えているものもあるし、機能拡充に応じて増大した情報漏洩リスクに対応して指紋認証が取り入れられているものもある。室内では固定電話に繋がり、屋外では携帯電話として発信できる仕組みももうすぐ実現するし、iPod with Videoなんて80GBのHDDを備えているそうだ。そこまでのハイ・テクノロジーの搭載されたモバイルコンピュータが数万円で買えるのだから、よくよく考えたら凄い時代だ。