沢木耕太郎『深夜特急1 香港・マカオ』

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスで行く――と思い立った著者による、1年以上に及ぶ壮大な旅行記。読書人生の最初期である浪人時代に読んだ本で、その後も何度か読み返したのだが、人に貸したきり戻ってこないままであった。先日、沢木耕太郎の本を何冊か読んだこともあって、改めて購入してしまった。
旅行スタイルとしては、典型的なバックパッカーや貧乏旅行のそれであり、安宿を求めてさすらったり、行き当たりばったりで沈殿したりふらふら移動したりを繰り返している。実際「インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスで行く」というのが旅行の目的なのに、そのスタート地点であるインドに到着するまでに半年以上も費やしている状態である。当然まだ本書ではインドどころか香港とマカオでグズグズしている。しかし、それが面白い。
特に気に入っているのは、マカオでギャンブルに興じるシーンである。ギャンブルにアツくなって餅が根をどんどん吐き出す様や、逆に冷静に場やディーラーの心理を読んでいく様が、臨場感たっぷりで非常に面白い。
なお巻末には、山口文憲との長めの対談が収録されている。