藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 3 [俺と俺と俺]』

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (3) (SF短編PERFECT版 3)

藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (3) (SF短編PERFECT版 3)

藤子・F・不二雄は、『ドラえもん』や『パーマン』『21エモン』『ウメ星デンカ』『モジャ公』『キテレツ大百科』『エスパー魔美』といった漫画で知られている漫画家である。藤子・F・不二雄の言う「SF」は「サイエンス・フィクション」の略ではなく、「すこし・不思議」の略である。これらのすこし・不思議な「SF」は、まさにF氏にしか書けない貴重な子供向け作品群だが、一方で大人向けのSF短編集も意外なほど多く発表している。本書は、発表された年代別に藤子・F・不二雄の大人向けSF短編112話を全8巻に完全収録したパーフェクト版である。
シリーズ第3巻には以下の作品が収められている。

なくな! ゆうれい
3万3千平米
ひとりぼっちの宇宙戦争
分岐点
ぼくのオキちゃん
世界名作童話
ウルトラ・スーパー・デラックスマン
TMは絶対に
幸運児
1千年後の再会
おれ、夕子
大予言
老雄大いに語る
光陰
俺と俺と俺
女には売るものがある
みどりの守り神
耳太郎

第3巻の白眉はやはり「みどりの守り神」である。飛行機が不時着し、目覚めたら、動物どころか虫一匹いない植物だけの世界。人間も、主人公の少女と青年以外はどこにも見えない別世界――というプロローグ。藤子・F・不二雄は決して「すこし・不思議」だけではなく、骨太なSFでも傑作を生み出している。
なお巻末には真保裕一(作家)によるエッセイ「少し不思議な鏡」が収録されている。