ヘイコンサルティンググループ『グローバル人事 課題と現実』

グローバル人事―課題と現実 先進企業に学ぶ具体策

グローバル人事―課題と現実 先進企業に学ぶ具体策

前半が「いまなぜグローバル人事が最重要課題なのか」「グローバル人事をどのように成功させるか」という理屈めいた説明で、後半が三菱商事キヤノントヨタ帝人マツダのグローバル人事の担当者に対するインタビュー(もっとも、三菱商事以外はサラッとしたインタビューである)。前半は「ふーん、勉強になります」という程度だが、後半はグローバル企業における人事マンの試行錯誤が詳しく描写されており、面白かった。俺は前の会社で、人と組織に関する多くのマネジメント上の課題を体験してきたが、「労働組合」と「グローバルビジネス」の肌感覚は持っていない。その意味では、本書で書かれているグローバルな視点での試行錯誤は、非常に勉強になる。
ところで本書の前半にトーマス・フリードマン『フラット化する社会』の非常にわかりやすい解説があった。以前『フラット化する社会』は図書館で借りて即効で放り投げたという経緯があったのだが、思わぬところで参考になった。

 世界で最初のグローバリゼーション、すなわちグローバリゼーション1.0は、十五世紀のヨーロッパから始まりました。(略)このとき動力となったのは、馬の力であったり、人間の筋力が生み出す力であったり、風の力であったりと、自分たちが移動するための動力源として登場した、さまざまな物理的な力でした。次のグローバリゼーションは、一八〇〇年ごろから二〇〇〇年ごろに起きました。第二のグローバル化を推進したのは、蒸気機関、鉄道、飛行機、人工衛星、電報、電話などで、最後にはインターネットも登場します。
 そして現在は、第三のグローバル化(グローバリゼーション3.0)にさしかかっているというのが、「フラット化する世界」の主張です。グローバリゼーション3.0の際立った特徴は、その担い手が個人だという点です。グローバリゼーション1.0の時代、最大のスポンサーは国や封建君主でした。グローバリゼーション2.0のスポンサーは企業や法人でした。
 グローバリゼーションの担い手が国→企業→個人と細分化したことは、逆にいえば、それを可能とするほどに技術が進歩したことを意味します。インターネットやファクスやパソコン、情報処理システムなどの改良とコストダウンが進み、個人で買えるまでの経済性と、個人で使えるまでの簡便性が確保されたことと、グローバル化の進展は深い関係があります。

これをアンチョコに、あの分厚い『フラット化する社会』に再挑戦するかなー。