鈴木貴博『アマゾンのロングテールは、二度笑う』

有名な企業のニュースや、身の回りの馴染みある商品や出来事を用いて、わかりやすく戦略論の事例を示してくれる。相変わらずの巧さで、手堅く面白い。しかも今回は、何とハッスルの小川直也インリン様を題材に戦略論を語っている。プロレス好きの俺はさらに鈴木貴博が好きになってしまった。次は、俺の愛した新日本プロレスの凋落を題材に戦略論を語っていただきたーい!(脱線)
話を戻すと、本書の核心は「土俵の選び方こそが、戦略において最も重要なことなのだ」ということに尽きる。
そしてこれは、人材の優秀さ(コンピテンシー)でも同様のことが言える。今の状況をいかに良くするのかという能力は非常に重要だし、これ自体そう簡単に実行できることではない。しかし一歩突き抜けた能力者は、放っておいても成果が出るような状況を、今までと全く異なる文脈から作り出すことができるそうだ(パラダイム転換行動)。そう簡単にできることではないが、個人の能力の上でも事業の上でも、早くこのレベルに到達したいものである。
しかしアレだ、本書のタイトルは明らかに損をしている。何となくカッコイイ気もするタイトルだが、実際のところ、何の本かよくわからないからである。まあ『インキュベ日記』というブログの管理人が「タイトル」のわかりやすさについて語るのもどうかと思うが、実際イマイチなんだから仕方ない。評判が気になってAmazonのレビューを見ると、やはりタイトルは不人気のようだ。中には、「ロングテールは二度笑う」という字面から「ロングテール論」だと思って購入した人もいるようで、やはりタイトルのミスリードは罪が深い。そのレビュアーの言うように、最低限『アマゾンはロングテールで、二度笑う』にすべきだろう。