黒崎寛之『要点解説 ITILがわかる』

要点解説 ITILがわかる!

要点解説 ITILがわかる!

ITIL(Information Technology Infrastructure Library) とは、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめたもの――と、しょっぱなからWikipediaの定義をパクって恐縮であるが、まあ定義としてはこれで十分。ITILは10のプロセスと1つの機能から構成されており、11のプロセス/機能は、サービスサポートとサービスデリバリーに二分される。以下、本書で書かれている説明を引用(一部修正あり)。
まずサービスサポートでは、日々のITサービス運営の手法が記述されている。

  • インシデント管理……可能な限りすばやくサービスを復旧させ(応急措置)、企業の事業活動への影響を最小限に抑えることが目的のプロセス
  • 問題管理……インシデントや問題の根本原因を追究、解決し再発を防止するプロセス(恒久対策)
  • 構成管理……ITサービスの構成アイテム(CI:Configuration Item)を正しく認識し、その情報を維持更新し、確認・監査を行うプロセス
  • 変更管理……ITサービスを提供するために必要な構成アイテム(CI)の変更を正しく、安全に、かつ効率的に実施/コントロールするためのプロセス
  • リリース管理……変更管理プロセスで承認された変更内容を、ITサービスを提供する本番環境に正しく反映させるための変更作業そのものをコントロールするためのプロセス
  • サービスデスク……ITサービスを利用する顧客とITサービスを提供する組織の間の一元的な窓口を担い、インシデントの対応などのサポートを行う機能(唯一の機能)

一方サービスデリバリーでは、中長期的なITサービスの計画と改善計画が記述されている。

  • サービスレベル管理……ITサービスを利用する顧客と提供する組織との間で合意したサービスレベルを管理し、改善するためのプロセス
  • ITサービス財務管理……ITサービスを経済的かつ効果的に提供するために、ITサービスに必要な資産のコストとITサービスの収益性を管理するプロセス
  • 可用性管理……ITサービスの提供を持続させるために、ITサービスの提供に必要なITインフラストラクチャ(システム)と担当するスタッフの可用性を維持管理するためのプロセス
  • ITサービス継続性管理……災害または重大な障害によりITサービスが停止した場合でも、ITサービスを利用する顧客への影響を最小限に防ぐためのプロセス
  • キャパシティ管理……ITサービスを利用する顧客と企業の事業活動において、現在と将来必要とされるキャパシティ要求を正しく把握し、ITサービスの提供に必要なリソースのパフォーマンスを維持管理するプロセス

まあ正直プロセス/機能の定義を読んだだけでは「何のこっちゃ」という感じだろうが、本書ではITILを盲腸炎の手術になぞらえて説明しており、またそれぞれのプロセス/機能が他のプロセス/機能とどう違うかもわかりやすく説明している。プロセス/機能を評価する際のKPIの設定例も載せている。個人的には、途中までしか読んでいないものも含め、最近チェックした5〜6冊のITILの解説書の中で一番わかりやすいと思う。本書は図書館で借りたのだが、買ってきて手元に置くことにした。
ただしITILは2007年5月にバージョン3に改訂されているが、本書の発売時期は2006年であり、当然ながらバージョン2のITILの解説である。その点だけ注意されたし。