梶尾真治『おもいでエマノン』

鶴田謙二の描いた『おもいでエマノン』が非常に良かったので、その原作となる短編集を読んでみた。梶尾真治は、映画化もされた『黄泉がえり』などを代表作に持つSF作家らしい。何度も賞を取っているんだな。

本書のキモとなる設定については、漫画版『おもいでエマノン』の感想のときは書くのを控えた。けれど原作である本書の場合、その設定は裏表紙に書かれているので、ここに載せても問題ないだろう。エマノンという女性は、地球に生命が生まれて以来の30数億年の記憶を残らず覚えているという特殊体質(?)な人物なのである。といっても不老不死というわけではなく、その女性が女の子を産んだら、その時点で30数億年の記憶が女の子に移るというカラクリだ。言葉などわからず原始生物として漂っていた時代から、常に進化の最前線で、記憶を蓄積し続けている。

何とも不思議な設定だが、何はともあれ表題作「おもいでエマノン」はとにかく巧すぎる。SF的な巧拙は俺にはよくわからないが、とにかく心を揺さぶるのである。30数億年の時の流れなど想像しようもないが、エマノンの話を聞くうちに、時の流れの果てしなさが読み手の全身を貫く――。そしてラストの叙情っぷりと言ったら!

順序が逆になったが、収録作も以下に記載しておく。表題作に比べると他はどうしても一段劣るが、それでも一発ネタになりがちな設定を上手い具合に租借して、様々な短編を作り上げている。

おもいでエマノン
さかしまエングラム
ゆきずりアムネジア
とまどいマクトゥーヴ
うらぎりガリオン
たそがれコンタクト
しおかぜエヴォリューション
あしびきデイドリーム

しかしこうして見ると、鶴田謙二の漫画版『おもいでエマノン』は、原作にかなり忠実に作られていることがわかる。イメージに全く違和感がない。実に良い作品だ。本書はいくつか続編が出されているようなので、それらも近いうちにチェックしてみようと思う。

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)
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