吉越浩一郎『残業ゼロの仕事力』

「残業ゼロ」の仕事力

「残業ゼロ」の仕事力

トリンプ・インターナショナル・ジャパンの元代表取締役社長。残業を一切せず、1時間ほどの早朝会議で毎日40や50の議題を決めていくらしい。
残業をしないために、日本の曖昧な仕事の割り振りから脱却し、徹底的に個人ベースで仕事を規定し、その仕事を集中してやらせる。そして細分化した仕事には全て締め切り(デッドライン)を設定する。スケジュールだの優先順位付けだのを考えたり表を作ったりする前に、とにかくデッドラインの近いものを徹底的に処理する。そして昼の2時間程度は、私語も電話もミーティングも歩き回るのも一切禁止。ひたすら仕事をこなす――全てに賛同できるわけではないが、ハッとさせられるものは多く、非常に参考になった。
でもクリエイティブな仕事や考える仕事は無理だな。考える仕事の場合、この方式だと確かに集中して考えられるけれど、考える作業は時間を区切ったからといってベストな解を出せるとは限らない。もちろんマスタスケジュールは死守しなければならないが、全てのタスクを残業禁止のデイリーで管理して、果たして考え尽くせるかどうか。クリエイティブな仕事など、もっとその傾向は強いだろう。まあ限られた時間の中でベターな解を作るのだと割り切るのなら、それでも良いと思うんだけど。
……と批判めいたことを書いたが、全体的には素晴らしい本である。特に前述したスケジュールや優先順位付けにこだわり過ぎるなという主張は、俺の実感とも合っている。やるべきことをやるべき期日までにやれば、スケジュールは必ず守られるのである。でもまあこれも、個人ベースで仕事を割り振れるという前提があってこそのワークスタイルなんだろうけどね。
特に個人で働く人は参考にすべき箇所が多い。