日置弘一郎+二神恭一『コラボレーション組織の経営学』

コラボレーション組織の経営学

コラボレーション組織の経営学

本書は仕事中に読んだので(サボりではなく仕事として!)、使えそうなところをメモしながら読んでいた。それを基に、以下、備忘録として簡単に要点をまとめたい。
序章(コラボレーション組織へ)と第1章(自立的な個が紡ぎ出す「見えざる組織」の時代へ)では、同じ現象を扱いながら全く異なる評価をしているダニエル・ピンク『フリーエージェント社会の到来』とジル・A・フレイザー『窒息するオフィス』の2冊を題材としている。情報機器の発達が現代の企業と人のあり方に与える影響を考察した結果、強制的なシンクロナイゼーション(共時化)を伴う労働の体系が、コラボレーション(協同)やインプロビゼーション(即興)へを重視するそれへと変化しつつある――というのが、本書の立脚点であろうか。まとめると平凡な命題に思えて仕方ないが、本書はそれなりに学術的な本なので、本書の中ではもっと深い検討がなされている(ただ『フリーエージェント社会の到来』と『窒息するオフィス』の対比は興味深かったので、もう少し突っ込んで検討してほしかった)。
第2章(境界を超えたキャリア)では、境界を超えたキャリア(会社に縛られないキャリア)についての検討がなされている。インディペンデント・コントラクター(IC)、専門性の高い派遣社員、マイクロビジネスの働き方に着目し、コラボレーションと専門性とキャリア・ヴィジョンを持つことの重要性を説いている。
第3章(なぜ会社をやめるのか:仕事の曖昧さと効率的な組織労働)と第4章(テレワークと仕事のモビリティ)と第5章(コラボレーションを活かす経営組織)は省略。
第6章(内的コラボレーションと外的コラボレーション)では、社内での水平的・部門横断的なコラボレーションと、社外とのコラボレーションを分けて論じている。社外は、一般的なアライアンスだけでなく、NPO産業クラスター・シンジケート・産学官連携といったものも(簡単ではあるが)取り上げられている。有名な3C(Customer/Company/Competitor)のフレームにチャネル(Channel)やコラボレーション(Collaboration)を加えることもあるなど、この外部コラボレーションという考え方/手法は、現代の企業のあり方を考える上で極めて重要な概念だと思うが、その中でも産業クラスター産学官連携については、本書と同時期に発売された『クラスター組織の経営学』で詳述されているのではないかと推察中。
第7章(労働から「しごと」へ)では、NPOでの活動やデイ・トレーディングなど、従来型の「労働」という概念には収まり切らない多様な活動を「しごと」として捉え、状況を解説している。報酬には金銭的報酬と非金銭的報酬があり、NPOなんてものは金銭的報酬は微々たるものなのである。そもそもNPOは経済活動そのものが目的ではない。またデイトレーダーを従来型の「労働」の概念で「働いている」とみなすことが本当にできるかどうか、確かに難しい。
うーむ、改めて振り返ってみると、働き方や組織って多様なんだね。序章と第1章、それから第7章は、もっと突っ込んで読んでみたい。あと『フリーエージェント社会の到来』と『窒息するオフィス』も機会があれば読んでみよう。
フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか  窒息するオフィス 仕事に強迫されるアメリカ人