野尻抱介『ピニェルの振り子』

『SFが読みたい!』で紹介されていた本。
19世紀程度の科学技術の文明が惑星間飛行を手に入れたら――という設定から構築されたSF。いわゆるジュブナイル小説というのだろうか。少年と少女が主人公で、さわやかなポジティブさがある。表紙もイラストだし、文体も易しい。おまけにレーベルはソノラマ文庫である。しかしSFとしての骨格は(少なくとも門外漢の俺が読む限りにおいて)けっこうハードであり、また博物学や人類学の発想もところどころに織り込まれており、なかなか唸らされる内容である。これは面白い。
以前の俺ならソノラマ文庫というレーベルと表紙のイラストだけで「ああ、子ども向け小説ね」と判断し、手に取ることは100%なかっただろう。その意味で『SFが読みたい!』には素直に感謝しなければなるまい。