『フォーサイト』2009年3月号


国際情勢を中心とした骨太雑誌。
今月号の特集は「オバマ大統領は雇用を拡大できるか」という記事。2007年12月以来、アメリカでは360万人もの雇用が失われたとのことで、かつてないほど短期間で大量の雇用を創出するという試みに挑戦しようとしている、という内容である。この記事の内容を乱暴に要約すれば、いわゆる公共事業ということになるだろう。
俺は、この問題について何がしかの論評を行えるほどの知識はないので、まず大前研一『さらばアメリカ』で、大前研一が以下のように指摘している――という情報をシェアしておきたい(まだ「プロローグ」しか読んでいないのだが、近いうちに読み終えて感想もアップしたい)。
さらばアメリカ

 さらに市民運動家出身のオバマは、基本的に「富の創出」ではなく「富の分配」に力を入れると思われる点だ。
 実際、オバマや彼を支えている人たちの頭の中は富の分配の議論だけで、富の創出の議論は片鱗も見られない。1兆ドルの景気刺激策を打ち出すと公表しているが、それはケインズ流の需要創出策であり、世界中で成功した事例がほとんどない代物だ。いまアメリカが頭を痛めている問題は消費の減速であり、経済の縮小である。これは富の分配でなく、富の創出をしないと解決しない。

俺は経済学の素養がないので、大前研一の述べていることを根本的に理解し損ねている可能性があるけれど、要は、こうした公共事業型の経済刺激策は、失業者の失業手当の代替手段(富の分配)でしかありえず、本質的な消費の拡大には繋がらない、と言っているのだと思う。
実は、この特集記事でも、大前研一の問題意識と通ずる指摘がある。

 オバマ政権の高官たちが公の場で口に出しこそしないものの、密かに認める問題がある。新政権の景気刺激策は雇用を「守る」のがせいぜいで、新たに職を「創り出す」ところまで到達するかどうかわからない、ということだ。つまり、今回の刺激策は出血を止める「応急措置」」に過ぎないかもしれないというのだ。
 政府高官の中には、財政出動が遅すぎて「景気回復に間に合わない」という保守派の批判は、そもそも前提から間違っていると語る者もいる。彼らは、今後十カ月程度で不況が底を打ち、景気回復に向かうだろうと考えるから「間に合わない」というが、その認識自体が間違っているというわけだ。
 事実、この経済危機が二〇一〇年を通してもずっと続き、一一年に入っても出口が見えないと懸念する政府高官は少なくない。

問題にしていることは違うが、要は、オバマ政権の景気刺激策では根本的な解決に繋がらない可能性が高い、という点では一致している。

余談

さて、この世界的な恐慌に対する日本の(ほとんど唯一の)政策として、定額給付金という「富の分配」がなされようとしている。この政策の批判は他のブログなどで十分に語り尽くされているが、俺も大反対だ。そもそも税金というのは、膨大なコストをかけて個人から薄く広く金を集めて、個人では為し得ないような事柄(教育や医療や治安維持や防衛や交通といったインフラ系がその代表)を国が実施するというシステムなのだが、定額給付金というのは、そうやってわざわざコストをかけて集めた金を、またコストをかけて個人に薄く広く返していくという、とんでもない愚策である。つまり、最も非効率で効果の薄い、最も間抜けな政策なのである。本当にとんでもないよ。暴動が起こっても良いくらいだ。
さらにとんでもないことには、もう実施が間近に迫っているはずなのに、政治家とマスコミが何をやっているかというと、この愚策の(愚策なりの)効果と効率を追求するための具体的な方策を議論しているわけでは全然なく、麻生のアラ探しや酔っ払い大臣叩き、小泉が再議決に欠席するだのしないだのといった政局の報道が中心なのである。
はっきり言うが、麻生が漢字を読めないから何だって言うんだ! そりゃ読める漢字もあれば読めない漢字もあるし、(本当は読めても)読み間違えることだってある。俺は就任前から一貫して麻生が嫌いなのだが、麻生が批判されるべきは、外交通という前評判の割に(英語でのスピーチを除けば)それほどの外交的成果を示せていないことであり、世界恐慌を前にして日本の展望を全く示せないことである。断じて漢字力がないからでも、カップラーメンの値段を知らないからでもない。もちろん酔っ払い大臣を任命したことでもない(そもそも俺は「任命責任」云々で国会が止まることが許せないのだが、それはまた別の話)。
大体このクソ大変な時期に、フリップまで用意して一国の首相の漢字力を小馬鹿にして悦に入っている民主党の石井副代表を何故マスコミは野放しにしているのか、本当に理解に苦しむ。時代が時代なら決闘モノの破廉恥な行為で、俺は大問題だと思ったのだが、なぜマスコミは石井副代表を辞任に追い込まなかったのか? 答えは簡単で、要はマスコミも一緒になって面白がっている蛆虫なのである。日本の政治家とマスコミは本当にろくでもない最悪コンビだ。結託して日本を潰そうとしているのかと錯覚することすらある……のだが、余談の方が長くなったので、今日はこの辺で……。

追記

俺は(まあ俺に限らず多くの日本人はそうだろうけど)日本の政治やマスコミには根深い不信感を持っているので、この手の話題になると、どうしても文章が無駄に長くなるんだよな。不毛なので、できるだけ話題にしないようにしているんだけど。www.fsight.jp