皆川亮二『PEACE MAKER』2巻

PEACE MAKER 2 (ヤングジャンプコミックス)

PEACE MAKER 2 (ヤングジャンプコミックス)

銃による決闘が一般的だった時代の、伝説のデュエリストの息子が主人公。仲間らしき人物も増えてきて、なんというか、賑やかさが出てきた。まあ1巻のエントリーでも書いたように、何となく「ベタ」というかストーリーの先が見えてくるのが残念と言えば残念かもしれない。この作品では、伝説のデュエリストの息子とか、闇の組織的なアレとか、闇の組織的なアレに追われる謎の女の子とか、頼まれたわけでもないのに執拗に主人公を気にしてくれるライバルとか、どうやら主人公の兄が闇の組織的なアレの一員らしいとか、一見して「ベタ」なモチーフが多く配置されている。
ただ、この「ベタ」ということを少しだけ掘り下げて考えてみると、たとえテーマやモチーフやストーリーが「ベタ」でも「読ませる作品」や「広く受け入れられている作品」は事実として数多くあるのである。例えば、本作は広い意味では西部劇(西洋版時代劇)というジャンルになるだろうが、(特に古典的な)時代劇の多くは洋の東西を問わず「ベタ」なものである。水戸黄門の勧善懲悪ストーリーを「ベタ」だと怒る野暮な奴はあまりいない。水戸黄門では、多くの人はそうした予測可能な「ベタ」なモチーフを見て「おー印籠が出たよ、最初から出せよ」と楽しんだり、全く驚きのないストーリーを安心しながら観たり、逆にそうした「ベタ」なモチーフとは違うところに作り手のこだわりや非凡な面白さを見出したりするわけである。
本作も、「ベタ」なモチーフは多いが、かといって詰まらないわけではない。そもそもの画力が高いから眺めるだけでも楽しいし、「ベタ」なモチーフや展開そのものがけっこう面白いし、これから「ベタ」なモチーフを突き破るような驚きの展開があるかもしれない、という期待もある。全体としてはギラギラ光る良作だ。
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余談(『ADAMAS』の紹介)

皆川亮二は今『PEACE MAKER』だけでなく『ADAMAS』も連載しているが、こっちも面白い。むしろこっちの方が好きなくらいであるが、実は知り合いに貸しているため、細かい設定を忘れてしまっており、しばらくは感想をアップできそうにない。そのため(いずれ正式にエントリーするが)この機会を利用して余談的に紹介しておく。
『ADAMAS』は、ジュエルマスター(宝石使い)と呼ばれる、宝石に秘められた能力を引き出すことができる特殊能力を持った女が主人公である。主人公(ヒロイン)は一見して普通の女性なのだが、ダイヤモンドのチカラを引き出すことで、ゴリラ顔負けの物凄いパワーを出せるし、ダイヤモンドを身につけた者のマインドや動きを制御することすら可能である。通信販売などで幸運をもたらす石や水晶の類を見かけることがあるけれど、要はそれをもっと漫画的に拡大解釈したのが、本作のモチーフだ。
ただ、この作品はモチーフだのなんだのといった小難しいことを考える必要などない!




綺麗な女が小悪党をぶっ飛ばす姿――理屈抜きで、とにかく爽快だ!
主人公が持っているカイザーナックルについてなど、他にも色々と語りたいことはあるが、それはいずれ改めてエントリーしたい。
ADAMAS(1) (イブニングKC)  ADAMAS(2) (イブニングKC)