『フォーサイト』2009年7月号


国際情勢を中心とした骨太雑誌。
今月も他のメディアが取り上げない硬派な記事が満載だが、特に2つのテーマが気になった。
ひとつは北朝鮮関連の記事。金正日の健康不安による後継者問題や軍部の権力増大などによって北朝鮮が変質し、「瀬戸際外交」ではなくて「純粋な武力」で国家を守ろうとしているように見える――という指摘には、思わずハッとさせられた。確かに、ここまでの振る舞いを「瀬戸際外交」と見るのは難しく、なりふり構わず核保有国を目指していると理解する方が適切に思えた。
もうひとつは民主党関連の記事。その中でも、以下の3つの記事を簡単に紹介したい。

民主党の経済政策を検証する

現実的になってきた民主党政権の誕生を控え、民主党の経済政策を詳しく見てみようという趣旨。民主党の経済政策は、弱者にはバラマキ、強者には負担増、という社会主義的な色彩が採られる可能性が高い。しかし対する自民党も麻生内閣はバラマキ的な経済対策を繰り返している。そしてより重要なことに、次の選挙に向けて検証に足る経済政策を打ち出しておらず、政権がどちらに転んでも、そのツケは国民に回ってくる――という、いささか厭世的な内容。しかしその内容には賛成だ。永田町で完結した政治が行われている限り、どう転んでもロクな政治にはならない。

「鳩山政権」を支える民主党の中堅・若手十八人

鳩山由紀夫・小沢一郎・管直人・岡田克也といった「お馴染みの顔」に続く中堅・若手の政治家を、「即戦力組」「有望株」「側近たち」という3つのグループで紹介するというもの。
まず即戦力組は、前原誠司・野田佳彦・枝野幸男・玄葉光一郎・樽床伸二の五人。前原は代表経験者だが、まだ47歳だったんだな。個人的には嫌いじゃなかったが、スキャンダル攻撃に溺れたため「メール問題」で評価を下げた。与野党いずれになるとしても、もう1回「対案、提案路線」を突き詰めてほしいね。
次に有望株は、長妻昭・松本剛明・馬淵澄夫・細野豪志・松井孝治・福山哲郎・逢坂誠二・蓮舫の八人。蓮舫ってアイドルタレント→キャスター→参議院議員と華麗なる転身を遂げたと思っていたら、いつの間にか政治家として結構な頭角を現していたんだねえ。
最後は側近。小沢鋭仁・松野頼久・平野博文・鈴木克昌・松木謙公の五人。
まあ、この18人はこれからちょっと気にかけてみよう。

堅調「鳩山民主党」が問われる「政権担当能力」

この記事で、鳩山由紀夫の考え方を改めて思い知った。

 檀上でマイクを持った鳩山代表は民主党が掲げている政策には財源の根拠がないという自民党などからの批判に対して反論を試みた。
「財源はいくらでも出てくると私は信じている。一般会計と特別会計を合わせると二百兆円あまりになります。そのうちの一割が二十兆円。無駄をやめましょう。一割ぐらいは浮くもんです」
 財源について「一割ぐらいは浮くもんです」とは言いも言ったり。楽観的なのか無責任なのか。これでは、どこをどう削減するのか、まったく不明である。一事が万事とは言わないまでも、鳩山氏の演説はほとんどこんな調子なのである。
 しかし、鳩山氏のこの問題発言を翌日の紙面でとりあげて問題視した全国紙はなかった。

なんだろね、この脱力感。新聞を初めとしたマスメディアの凋落ぶり・無力ぶりも改めて浮き彫りになったと言えるだろう。www.fsight.jp