国際経営者協会(IMA)『未来を創る経営者』

未来を創る経営者 -20人のグローバル経営者からのメッセージ-

未来を創る経営者 -20人のグローバル経営者からのメッセージ-

  • 作者: 国際経営者協会(IMA),岩崎哲夫,小川政信,加藤春一,淡輪敬三,鳥居正男,西谷武夫,西山昌彦,浜脇洋二,藤井義彦,山中信義,ほか
  • 出版社/メーカー: 生産性出版
  • 発売日: 2009/05/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ワトソンワイアットの淡輪敬三さんの文章があったので購入。まだ淡輪敬三さんとお会いしたことはないが、『ビジネスマンプロ化宣言』は最も影響を受けた本のひとつであり、本書の文章も興味深く拝読した。

 当時一九八〇年代後半にマッキンゼーに戦略立案を依頼した客先では、経営者から現場の社員まで、すぐにでも「目から鱗が落ちました」と言いたい、という空気が充満していました。そうした異常なほど高い期待の中で、自らの脳みそを徹底して追い込む、知的に密度の高い時間を過ごしました。最初の三年半くらいは、常に月間四百時間以上働いていたと思います。
 顧客を明確に定義し、その顧客に他の誰にも負けない水準の価値を、体系化された専門性に基づいて創出する――「プロフェッショナル」という生き方を、毎日、毎時間求められたのです。しかも、「いただいたフィーの最低限三十〜五十倍の金銭的価値を出さなければ、一人前ではない」と徹底的に鍛え抜かれました。
 ただ、その過程で驚かされたのは、課題解決での脳みその使い方が、エンジニアとしての経験と共通性が高かったことです。
 ――今起こっている事実を徹底して洗い出し、その背後にある、すべての事象を説明する構造を「モデル化」する。そのモデルを論理的にシミュレーションして、現状を改善・進化・発展させるメカニズムを見つけ出す。それを実現する具体的な手立てをデザインして組織を構成する各プレイヤーの行動まで落としこんでいく。――まさにエンジニアリングの課題解決と同じプロセスでした。

上記などは、今まさに俺がコンサルタントとして徹底してこだわり抜こうとしていることである。ふわっとした印象論ではなく、常に「事実(数値・個々人の行動)ベースで語ること」と「経営・事業から一気通貫で連鎖させて個々人の行動にまで落とし込む」ことへの志向は、淡輪敬三さんの『ビジネスマンプロ化宣言』を読んで影響されたことなんだな、ということを再認識した。

 私は今まで二十年以上、経営コンサルタントとして大企業からベンチャーまで多様な企業変革のサポートをしてきました。そして、その企業が激変する環境の中で、継続的に進化発展できるかどうかは、トップをリーダーとする経営チームの「経営構想力」に依存することを繰り返し見てきました。
 つまり私は、クライアント企業の経営構想力を外部からいかに進化させるか、また補強するか、ということに専念してきたことになります。
 企業の経営構想力とは、喩えれば、トップが「ヘリコプターの形をしたタイムマシーン」に乗っている状況に近いものです。
 まず自社や顧客、ライバルや関連する企業、一人ひとりの社員やお客様、その活き活きした動きを捉えながら、その全体像が見渡せる高さまで上昇し、現状の優先度の高い課題は何かを考えます。個々の現場と全体像の両面を見ようとして、上昇と降下を自在に繰り返します。
 さらには、全体を見渡せる高さで、五年後の未来の状況を見にいきます。「自分自身、組織や企業、国や世界がどのように変化しているか」、「望ましい姿になっているのか」、あるいは「極めて困難な状況に直面しているのか」を考えます。
 そして、その状況から現時点まで時間を遡って、市場と自社と自分の五年後を左右する分岐点を発見するのです。その分岐点を好ましい形で通過するために、今何をすべきかを決めて、優先順位を見極めて、より望ましい姿へと一歩一歩前進していくことになります。

これなんかは、俺がコンサルタントとして目指したい方向性を(俺の代わりに)整理してくれたのかと錯覚したほどである。経営の方向性と人事の方向性をどう連鎖させるか、コンサルティングとコンサルティング後のギャップをどう解消するか、経営層とミドルマネジメント層のギャップをどう解消するか、常に考えながら仕事をしているのだが、それらに対する回答のかなりの部分が「ヘリコプター型タイムマシーン」の喩えでクリアになる。

早く次の単著を出してほしい!

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