酒井穣『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)

『はじめての課長の教科書』『あたらしい戦略の教科書』『英会話ヒトリゴト学習法』という良書を次々に出した著者による最新作。誰かがAmazonのレビューでまとめた目次をそのまま引用させてもらうが、とにかく構成がわかりやすい。

第1章 何のために育てるのか(人材育成の目的)
第2章 誰を育てるのか(育成ターゲットの選定)
第3章 いつ育てるのか(タイミングを外さない育成)
第4章 どうやって育てるのか(育成プログラムの設計思想)
第5章 誰が育てるのか(人材育成の責任)
第6章 教育効果をどのように測定するか
第7章 育成プログラムの具体例

また内容も良かった。正確な表現ではなく感覚的な表現になるが、「これまでのHRの理論や流れ」と「著者の経験や信念」が縦糸と横糸のような関係で丁寧に織り込まれており、理論と実践のバランスをしっかり取ろうとされているように思われた。
最も面白かったのは「育成プログラムの具体例」である。「どこかのかっこいい会社」の美談的な事例が載せられているのではなく、著者が現在ジョインしている日本のITベンチャーで実際に採用されている事例が載っている。そうした生々しい試行錯誤が1000円以下で読めるのは、得がたい読書経験と言って良いだろう。

余談




実を言うと、第6章の教育効果測定を最も期待して購入したが、(俺の期待値が高すぎたこともあって)期待値ほどの内容ではなかった。有名な教育効果測定のフレームを自社で改良して使っていたようなのだが、どうしてこの指標のデータを集めているのか、外部の人間にはよくわからなかった。まあ「自分たちで工夫してやりなよ」というのが、裏に込められたメッセージだったのかもしれない。
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