小山鉄郎『村上春樹を読みつくす』

村上春樹を読みつくす (講談社現代新書)

村上春樹を読みつくす (講談社現代新書)

村上春樹の解説本。この人は村上春樹に何度となくインタビューをしたことがあるようで、村上春樹の言葉が多く載っているという点は凄く良いと思う。
ただし、その言葉は断片的である。
加えて、著者の読み解きには全般的に納得しがたいものがある。平家物語のキーワードと作品中のキーワードを掛けあわせてみたり、『ノルウェイの森』の装丁と登場人物の「緑」を掛けあわせてみたり……「○○とかけまして、○○と解きます」「その心は」「○○なんです」という、いわゆる言葉遊び的なレベルを脱していない読み解きが多い。村上春樹がユーモアのセンスに溢れた人間であることはファンの常識だが、自身の長編小説で、そうした言葉遊び的な謎を散りばめるような人間だろうか?
謎かけが読みたいなら、ねづっちの「整いました!」の謎かけ芸の方が面白いし、村上春樹の解説本なら他にもっと良いのがあるだろう。まあ俺は「なるほど」と思った解説本に出会ったことは少ないが、例えば、吉田春生『村上春樹、転換する』は少し古いけれど「なるほど」と思ったし、石原千秋『謎とき 村上春樹』は(納得しかねる箇所も多いが)考えさせられたという点では読んで良かった。
これでもととのいますか??Wコロンのなぞかけツアー? [DVD]  村上春樹、転換する  謎とき村上春樹 (光文社新書)
また村上春樹のインタビューを読みたいなら、今読んでいる『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』という村上春樹のインタビュー集や、3ヶ月ほど前に紹介した『考える人』という雑誌でのロングインタビューなどがオススメである。
夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです  考える人 2010年 08月号 [雑誌]