影山明『プロジェクトを変える12の知恵』

プロジェクトを変える12の知恵 -ケンブリッジ式ファシリテーション-

プロジェクトを変える12の知恵 -ケンブリッジ式ファシリテーション-

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズという会社が出した本。副題は「ケンブリッジファシリテーション」である。
この手の「コーチングやファシリテーションのテクを使ってプロジェクトや会議を変えよう」という本は一時期かなり出ていたが、そのほとんどはビジネスの現場に定着していないと思われる。その理由はいくつかあるだろうが、俺は「結局、自分だけが実践しても意味ねーよ、周囲も一緒に実践しなければ……でもその方法がわからない」ということだと思う。
例えば、ある日突然、上司がモア・アンド・レスの議論をさせてみたり、ファシリテーターがグラフィカルな整理をホワイトボードでしてみたり、ペンを持って立ち上がった人だけが発言して良いといったグラウンド・ルールを設定してみたり、悩んだ末に相談したら「君はどうしたい?」ばかり上司が言うようになったり……俺は何度も経験があるが、現状が決してベストではない(むしろバッドだ)とわかっているのに、どうも気持ちが冷えてしまうのである。
結局、本書もその隘路から抜け出ているとは思えない。これはプロセス・コンサルタントファシリテーターがやるから効果を発揮することで、ごく一般的なビジネスマンがの人がごく一般的な会社でこうしたツールや手法をどのように取り入れたら上手く行くのか、結局よくわからないままである。
ただ、単体でも「おっ」と思わせられた箇所もいくつかある。例えば、セッション・プランの項。恣意的・感覚的なパーセンテージと行数ばかりが増えたWBSで進捗を管理するくらいなら、セッション単位で進捗を管理する方が実践的……という指摘は、確かに「なるほど」と唸らされた。