冷泉彰彦『「上から目線」の時代』

「上から目線」の時代 (講談社現代新書)

「上から目線」の時代 (講談社現代新書)

『「関係の空気」「場の空気」』『911 セプテンバーイレブンス』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』などで知られる著者による、日本社会・日本文化を論じた本。直接的には『「関係の空気」「場の空気」』の姉妹本になる。
「関係の空気」 「場の空気」 (講談社現代新書)  911 セプテンバーイレブンス (小学館文庫)  民主党のアメリカ 共和党のアメリカ (日経プレミアシリーズ)
「上から目線」に着目したのは、極めて優れた着眼だと思う。
そして、それだけの本である。
「上から目線」と日本社会や日本のコミュニケーションスタイルを結びつけるという狙いは凄く面白いが、残念ながら本書で挙げられた事例のほとんどがピンと来ないので、読んでいてあまり納得できなかった。
例えば麻生元総理が「漢字の誤読」や「バー通い」でバッシングを受けたのは、上から目線などではない。あれはメディアや民主党を初めとした当時の野党が作り上げた腐った「空気」が原因であり、著者の姉妹本(「関係の空気」「場の空気」)の方が分析フレームワークとして適している事例だと思う。
また勝間=ひろゆき対談も、事例としてどこまで適切なのか疑問。そこから導き出された、日本語という言語が暗黙的に孕み持つ上下関係の規定……というアイデアは面白かったけれども、その元になった勝間=ひろゆき対談は、単に自分の思い通りに対談をコントロールできなかった勝間がかんしゃくを起こしただけだと思う。
鳩山や菅直人の事例も出ていたが、こちらもあまりしっくり来なかった。
ただ面白いテーマではあるため、続編というかパワーアップ版を読みたい気もする。