米澤穂信『ふたりの距離の概算』

ふたりの距離の概算

ふたりの距離の概算

日常の謎×安楽椅子な青春ミステリである「古典部」シリーズ第五弾。
古典部という目的&活動内容が不明な部に入った高校生4人がメインキャラクターなのだが、4人は高校2年生に進級し、後輩を迎えることになる。しかし仮入部していた1年生が突然「入部しない」と言ってきた……というプロローグ。まあ目的も活動内容も不明な部活なので、誰が入ったり辞めたりしても大した実害はないけれど、ヒロインの千反田が嫌われて落ち込んでいるので、主人公がちょっと推理してみました、という風に話が展開する。
結構なページを費やし、至るところにアイテムを配置しているが、少なくとも俺のようなミステリの素人にとっては「なるほど」と唸らされるテクニカルな謎解きだった。謎解きのパーツが組み立てられる様は実に鮮やかである。ただし正直に言って、甘酸っぱいだの切ないだのといった青春ストーリーにありがちな感想を超えた、やや後味の悪いラストだと俺は感じた。謎を解決した結果、何も良いことがないというかね。何と言えば良いのだろう。謎を明らかにすることで誰かが幸福あるいは不幸になるといったものではない。解決すべき謎そのものが少々つまらなく、かつ解かれた謎の出口がどこにもないという……上手く言えないが、そんな印象?
とはいえ、物凄くつまらないかと問われるとそんなことはない。元ライトノベル作家らしい仕立てというか、キャラクターは地味ながら魅力的であり、キャラクターの関係性もどんどん変化してきているため、続きが出たらまた買ってしまいたいような磁力がある。

余談

古典部」シリーズが、『氷菓』というタイトルでアニメ化されるようだ。シリーズ第一弾の『氷菓』だけではアニメの分量が足りないと思うが、どこまでアニメ化されるんだろう。
しかし絵のクオリティが高くて驚いた。小説を読んで漠然と抱いていたキャラクターの外見イメージが「ほぼそのまま」で、違和感が全然ない。原作に忠実にアニメ化することで定評のある京都アニメーション京アニ)が作っているらしいが、小説のイメージも忠実にアニメ化できるんだな。デザインや映像を仕事にしている人の才能って凄い。