- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1984/01/12
- メディア: 文庫
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本書はテレビドラマ化もされた作品だが、テレビドラマ自体を観たことはない。ただし深田恭子の番宣やCMは何となく記憶に残っており、天然ボケ的な要素のある大富豪の娘が金を使いまくりながら事件を解決する作品だというイメージは持っていた。
で、実際に本書を読んでみて驚いたのは、そもそも原作は主人公が男である。それに主人公は捜査のために自腹を切るが、無目的に金銭をばらまくのではなく、犯人の炙り出し、トリックの再現、暴力団の行動制御等、それなりにバリエーションが豊富で、かつ必要に迫られたものである。主人公の性格も特に天然ボケという訳ではなく、意外に常識的な感覚と推理能力を持っているのである。またコミカルな要素はちょいちょいあるものの、破天荒なコメディーと言えるほど砕けた感じではない。
つまり主人公の設定こそ奇抜なものの、意外にイロモノではないちゃんとしたミステリーだなと思った。まあ「ちゃんと」と言ってもトリックの善し悪しは俺にはわからないんだけどね。
なお、いきなり登場人物が「読者」の方をくるりと向いて話し始めたり、これは小説だからいきなり事件当日に飛ぶのだが……といった解説が入るなど、筒井康隆らしいメタフィクション的な遊びは本書でも健在。