豊田徹也『アンダーカレント』

アンダーカレント  アフタヌーンKCDX

アンダーカレント アフタヌーンKCDX

もう何十回(いや、百何十回か?)と読んだ大傑作の漫画。
以下は帯のコピー。

ほんとうはすべて知っていた。心の底流(undercurrent)が導く結末を。
夫が失踪し、家業の銭湯も手につかず、途方に暮れる女。
やがて銭湯を再開した女を、目立たず語らずひっそりと支える男。
穏やかな日々の底で悲劇と喜劇が交差し、出会って離れる人間の、
充実感と喪失感が深く流れる。
映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。

この人は画力も高い。構図も巧い。漫画における画力や構図は、小説における文体のようなものであり、映画におけるカメラワークと言って良いだろう。もちろん文体やカメラワークの技術が高いだけで傑作を生むことはできないが、豊田徹也は、モチーフ・ストーリー・それらが合わさって生み出され否応なく受け手に訴えかける主題(テーマ)の設定も、とにかく圧倒的に巧い。ただただ魅了され、ページをめくる手が止まらなくなり、読後は深い余韻に包まれる漫画……それが本書である。
この人は寡作で、もう10年くらいはプロの漫画家として活動しているのに、本書の後は『珈琲時間』という短編集しか出していない。目の肥えたファンには相当注目されていると思うし、コンスタントに作品を出してほしいのだが……。