北崎拓『クピドの悪戯 このSを、見よ!』1〜11巻

現実にはありえないような状況に巻き込まれた若者の恋を描く「クピドの悪戯」というオムニバスシリーズ。このシリーズは、これまでもかなり面白い設定でエロと純愛の境界を描いてきたが、本作の設定もなかなかブッ飛んでいて面白い。
主人公は、子供の頃に幼馴染み(女)に尻のアザを笑われたことで、誰にも尻のアザを見せないようにしてきたが、実はこのアザ(スティグマ)は年頃の女に見せると、その女を自分の性奴隷にすることができるという能力を持っていた(これまで見せてこなかったので大人になるまで気づかなかったのである)。しかしスティグマは一回その女に挿入すると効果が消滅する限定付きの能力であった。
……こう書くと面白くなさそうだが、これが実に面白い。主人公と、幼馴染みと、主人公が小さい頃から恋焦がれる年上の女性の三角関係になるのだが、単なる突飛なSF漫画ではなく、エロもコメディーもシリアスもイケる。しかも絵も巧くて心理描写も巧みである。キャラクターも、既に述べた主役級の三角関係に加えて、幼馴染み(女)に恋するレズビアンや、年上の女性(今は女医)の性格が悪そうな婚約者、主人公のスティグマの力にかかったナースさんなど、他の登場人物もキャラが立っている。
最近は、主人公が年上の女医に恋焦がれる設定がイマイチで最近コミックスの購入が滞っていたのだが、最近は主人公の父親が登場するなど再び面白くなってきたので、結局コミックスを最新刊まで揃える羽目に。「クピドの悪戯」シリーズは本当に面白い。12巻が楽しみだ。