押見修造『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

吃音(どもり)に悩んでいる女子高生が主人公なのだが、ただの「吃音漫画」にはしたくないと作者が「あとがき」で述べているように、本書に「吃音」や「どもり」といった類の言葉は作中に全く出てこない。本書で描かれているのは、コンプレックスに悩み、他人と上手く関係を作れない少女の姿であり、あくまでも誰にでも当てはまる普遍的な感情の揺れ動きやコミュニケーションの様態である。些細な行動が誰かを傷つけたりする描写や、微妙な感情を表現した顔の表情の描写なども非常に巧く、深く静かに胸を打つ佳品である。

なお、この作者は『惡の華』でブレイクしたが、なかなか作家性が強い魅力的な書き手だなと思う。他の作品も早く読みたい。

惡の華(1) (少年マガジンKC)  惡の華(2) (講談社コミックス)  惡の華(3) (講談社コミックス)
惡の華(4) (講談社コミックス)  惡の華(5) (講談社コミックス)  惡の華(6) (講談社コミックス)  惡の華(7) (講談社コミックス)