とよ田みのる『ラブロマ 新装版』2巻

ラブロマ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル) ラブロマ 2 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル) ラブロマ 3 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル) ラブロマ 4 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル) ラブロマ 5 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)
誠実&正直すぎて時にエキセントリックですらある星野くんと、ボーイッシュでツッコミが得意な根岸さんの2人を中心とした傑作ラブコメ漫画。二人は愛について、成長について、欲望について、二人の関係についてなど、様々なことを正面から見据え、あまりにも直球で語り合う。そこがコメディとしてのキモになる面白さなのだが、一周回ってじんわりあたたかい気持ちにもなれるハートフルな作品である。連載当時は「ラブコメ」の表現が一回りするとこうなるのか……と驚いたものだが、新装版となる本書を読み返してみて、2013年現在でも本作はラブコメの最先端であり、その魅力はいささかも衰えていないことを確信した次第である。
さて、この巻は特に傑作揃いなのだが、特に好きなのは自転車にまつわるエピソードである。実は星野くん、これまで自転車に乗れなかった(そしてそのことを特に不便だとも感じていなかった)のだが、この度、根岸さんと特訓することになる。以下で引用しているのはその時のひとコマ。


【星野くん】
河 キレイじゃないですか?


【根岸さん】
うん
私も今そう思ってたよ


【星野くん】
子供の頃 この河がキレイだなんて 一度も思ったことなかったです
でも今は 世界が輝いて見えるんです
今まで気にもしなかった
通学途中に見かけた花とか
晴れた空とか
根岸さんとか
昼間見たエロ本とか


【根岸さん】
一緒にすんなよ!!


【星野くん】
そんな思いを込めて もう一度チャレンジします


【根岸さん】
(星野くんの自転車を支えながら)
私もね!!
世界が輝いて見えるよ!!

世界が輝いて見える……なんと幸せな言葉だろうか。
何度読み返しても傑作のワンシーンと言って良い。

余談

ボケ・ツッコミの切れ味も鋭いので、そちらも1ページのみ引用。

【塚原くん】
星野変わったよな


【星野くん】
そうか?


【塚原くん】
ガキの頃あんま笑わなかったじゃねえか


【星野くん】
だとしたら愛の力だな


【塚原くん】
そうだな(どーでもいい)


【星野くん】
根岸さんを中心に 世界が輝きだしたんだよ


【塚原くん】
そうだな


【星野くん】
絵にするとこんな感じなんだ


【塚原くん】
悪い全然わかんねえ

単なるボケ・ツッコミではない。たった一人との出会いが自分を変え、世界の認識を変えるという奇跡が語られているのである。たった1ページでも笑えて深い。