向後千春+冨永敦子『統計学がわかる 回帰分析・因子分析編』

統計学がわかる 【回帰分析・因子分析編】 (ファーストブック)

統計学がわかる 【回帰分析・因子分析編】 (ファーストブック)

蔵書の整理をしていたところ、以前読んだ『統計学がわかる』と、その続編である本書を発掘。
統計学がわかる (ファーストブック)
前作『統計学がわかる』はハンバーガーショップを題材に、平均・分散・標準偏差といった統計学の超基本やカイ2乗検定・t検定を学ぶことで、データ間に「意味のある差」があるのかを分析できるようになるための本だった。一方、本作はアイスクリームショップを題材に、相関・回帰分析・重回帰・因子分析などの基礎を学ぶことで、データ間にどのような「関係」があるのかを分析できるようになっている。超初心者に向けた本なので、学べることは限られているが、多くの人々が一度はアルバイトをしたことがある店舗ビジネスを題材にしていること、Excelでの活用を念頭に置いていることから、統計学の勘所を掴むという意味に置いては、前作も本作も超良書である。

余談

本書の著者である向後千春はインストラクショナルデザイン(instructional design/ID)という学問領域の研究者である。インストラクショナルデザインは(あえて分類すると)教育学に属することが多いようだ。しかし俺の理解では、インストラクショナルデザインは、「教えるとは何か」といった形而上学的な議論や、先進国と発展途上国の教育格差といった社会学的な議論、はたまたセンセイに求められる資質といった道徳的な議論には、あまり深入りしない。その代わり学習者が「いかに学ぶか」に焦点を当て、学習者がより効果的・効率的・自律的に物事を学ぶにはどうすれば良いのかを、単なる理論にとどまらず、具体的な方法論・ツール・学習環境などと合わせて研究し、また実際に学習教材を作ってしまう。つまりインストラクショナルデザイン実学であると言って良い。
そうしたバックグラウンドを持つ著者が作っているのが本書である。俺のように研修マテリアルやマテリアルを何度も作った経験のある者からすると、本書の諸々の工夫に惚れ惚れしてしまう。しかしもちろん、インストラクショナルデザイン云々を気にすることなく、気持ちよく学ぶことができる。