インキュベ日記

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田中隆之+日本貿易会 総合商社原論特別研究会事業『総合商社の研究 その源流、成立、展開』

総合商社の研究―その源流、成立、展開

総合商社の研究―その源流、成立、展開

総合商社論は昔から一定数の書籍が出版されており、その幾つかには俺も目を通してきたが、この本は優れた部類だと思う。明治や大正・戦後・80年代・はたまた江戸時代まで遡って歴史的な「源流」から総合商社を探る試みについては、本書が必要かつ十分な示唆を与えてくれたと思った。また総合商社の収益モデルを6パターンで解説してくれているが、こういう整理は非常に役に立つ。

  • コミッション(口銭)
    • 商社が商取引を仲介した場合の手数料のこと。
  • マージン(売買差益)
    • あらかじめ売値を決めずに仕入れを行い、市況が上がった段階で売り渡すことで得た利益のこと。
    • なお、いくらで買う、という売り先を見つけずに商品を仕入れ、その後に売り先を見つけて販売する行為を「仕切り取引(見込み取引)」と呼ぶ。
  • 付加価値を高めた販売(工賃など)
    • 買い付けた製品を加工し、付加価値を高めてから販売することで得た収益のこと。
    • 商社の場合には、コミッションやマージンと並び、トレードに関連した収益の引き出し方の発展形態とみなすことが可能。
  • 金利収入
    • トレードに付随して発生する、売掛けなどの短期の商業金融のこと。子会社や関連会社・その他の企業への貸付も含まれるが、後者は、次に見る事業投資による配当収入に近い。
  • 事業投資による配当収入
    • 文字通り。事業投資は、証券確保が目的である場合と、投資収益が目的である場合とに分けて考えることができると整理している。総合商社の行う事業投資の多くは、一般の投資会社(投資信託ヘッジファンド)のように単に収益性の高い企業に投資して高配当を得ることだけが目的なのではなく、企業再生ファンドのように企業価値の高まりを待って売り抜くことで利益を得ようとするのでもない。自身のビジネスポートフォリオに与えるシナジーを勘案して投資が決定されている。
  • フィー(サービスの手数料)
    • コミッション以外の手数料のこと。本書では、コンサルティング・経営指導・情報提供・M&Aの斡旋・信用保証等の手数料をこれに含めている。