インキュベ日記

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鈴木光司『ループ』

ループ (角川ホラー文庫)

ループ (角川ホラー文庫)

リング (角川ホラー文庫) らせん (角川ホラー文庫) ループ (角川ホラー文庫)
大人気を博した『リング』『らせん』の続編で、三部作の完結編になる。
『リング』は登場人物の名前も含めてほぼ完全に、『らせん』は大まかな展開を覚えていたのだが、正直なところ『ループ』は登場人物も筋書きも全く覚えていなかった。覚えているのは「前二作の世界観を相対化させる大どんでん返しがあったこと」と、それに伴う「アイデアありきのつまらない作品」という感情の記憶だけである。たまたま気が向いて10年以上ぶりに『リング』『らせん』『ループ』と読み返してみたが、これは大傑作と言って良いと思う。子持ちの未亡人との昼ドラめいたやり取りには全く感情移入できなかったけれど、ラストシーンは不覚にも胸が熱くなった。少なくとも初めて読んだ時、早々につまらないと断じるべきではなかった。
思い返すに、当時の俺は『リング』シリーズ三部作を「ホラー」だと認識していた。マスメディアの扱いもそうだったと思うし、作品も角川ホラー文庫から出版されている。しかし『リング』や『らせん』でハラハラドキドキした楽しみを『ループ』にも求めると、つまらないと思ってしまうだろう。つまりホラーなのは貞子と呪いのビデオをめぐる一部の要素だけで、三部作を通して振り返ると、結局この三部作は意志の力と世界の関係性をモチーフとした一連のSFだったのだと思う。