日本橋ヨヲコ『少女ファイト』10巻

少女ファイト(1) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(2) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(3) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(4) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(5) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(6) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(7) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(8) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(9) (KCデラックス イブニング ) 少女ファイト(10) (KCデラックス イブニング )
沸騰しまくりのアツい作風で知られた(というよりそれほど知られていなかったが個人的には大注目していた)日本橋ヨヲコの最新作。
バレーの天才と言われた姉を持つ大石練は、姉が事故で亡くなったことと、他人を考えない自身の獰猛なプレーでチームメンバーに嫌われていたことにより、バレーやバレーを好きだった自分を憎み、抜け殻のような中学校生活を送る。しかし運命の歯車が回り、結局、姉が通っていた黒曜谷高校に通うことになる。そして大石練はその高校で、天才と呼ばれた姉が見ていた景色を見るため、自身のトラウマと向き合いながら本気でバレーに打ち込もうとする……というアウトラインだろうか。主人公も魅力的だが、この漫画は周囲のキャラクターも大変魅力的である。特に黒曜谷高校の部員は才能や実力はあるけれど性格に問題があったり挫折したりした経験を持つ、いわゆる「使いづらい」アウトローを戦略的に集めているため、高校バレー部では仲間も先輩も監督も曲者揃いでキャラが立っている。
10巻は主人公よりも、そうした主人公の周囲の人々にスポットライトが当たる。セッターである自分に多大なるプライドを持っているのに身長の低さとチームバランスからリベロに転向せざるを得ない伊丹、取材のためマネージャーを希望するつもりが選手で入部することになった元・漫画家志望のズブの素人の小田切、煉の姉の交通事故死の場面に遭遇したことで主人公同様深く傷ついた陣内監督あたりが中心だが、この3人は準主役と言って良いほどの位置づけであり、エピソードの描写も丁寧である。実力不足で皆に迷惑をかけていることに耐え切れずボロボロになる小田切のエピソードは、かなり胸を締め付けられる。この種の無力感は誰もが生きていると多かれ少なかれ感じるものではないだろうか。
最近雑誌の執筆ペースも落ちているが、いま最も面白い漫画のひとつなので、ぜひコンスタントにコミックスを出してもらいたい。