ゲイル・キャリガー『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

たまたま本屋で『ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ』という本を見つけ、レトロ&キャッチーなタイトルに何となく興味を持ったのだが、これがシリーズ物のようなので、その第1作を手に取った次第。
ゲイル・キャリガーはスチームパンクと言うSFのサブジャンルを好んで書く作家のようなのだが、スチームパンクとは簡単に言うと、蒸気機関が広く使われていた時代を舞台にSF風味をプラスして作品世界を構築するジャンルである。SF風味と言っても、Wikipediaによると、当時の人々が考えていたようなレトロフューチャーなアイテムや、ちょっと突拍子もないような時代錯誤テクノロジーが織り込まれる傾向があるらしい。必然、レトロな感じと先鋭的な感じが混ざり合った独特の世界観になり、また作品のアプローチによっては歴史改変物として捉えることもできる。ちょっと違うかもしれないが、私は『天空の城ラピュタ』も広い意味ではスチームパンクじゃないかと思っている。
さて、本書は19世紀のヴィクトリア朝イギリスを舞台としており、「異界族」と呼ばれる吸血鬼・人狼・幽霊がしこたま登場する。ハリウッド文化を生み出したアメリカ人の作家らしい、とってつけたようなラブロマンスが登場するが、それを除けばけっこう面白い。
なお、今後このシリーズは以下のように続刊している。

  • 英国パラソル奇譚(Parasol Protectorate)
    • アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う
    • アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う
    • アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う
    • アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う
    • アレクシア女史、埃及木乃伊と踊る
  • 英国空中学園譚(Finishing School)
    • ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る
    • ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ